濃い髭に覆われた顔の修験者の姿が視えました。随分と暗い雰囲気を漂わせています。これは、心の中に何か鬱屈としたものを抱え込んでいる修行者なのだろうと思いました。
すると、彼が不思議なことを始めました。御堂の屋根の四隅に立ち、屋根から落ちてくる雨水を受けながら、呪言を唱え始めたのです。まず、北の隅に、次に東、次に南、そして最後に西でした。何故か、最後の西での彼の呼吸が一段強いことに気付きました。
四隅における儀式の際にどこかで他の地点と違う力が入ってしまうことが彼の悩みのようでした。
「こだわりが強すぎる。万遍のない平易な心をもたなくてはならないのに、どこかの一点に力が入ってしまう・・・これが俺の弱点だ。」
「お前も気をつけろ。子供を片可愛がりしてしまう。偏愛する傾向が強すぎる。意識がどこかの一点に集中して、他の部分がおざなりになるのを注意しなければダメだぞ。」前世の彼から彼女への忠告でした。
人の中にある差別をしてしまう心。これはコントロールするのはとても難しいものだし、いつのまにか自分の中に生まれていて気付かないことが多いものです。他人に指摘されても「そうかなぁ、そんなことはないはずだけれど・・・」と思ってしまう。私の母などは黒人を見ると「汚い。」と感じてしまうそうです。ひどい偏見です。反面教師として、私は自分の心をいつも見つめなおすようにしているつもりですが、なかなか自分の心の真の姿というのは、見えるものではないようです。

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