南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏
宮本のじう婆さんがその後で
死ぐなら夏死げ
アブ泣く蚊泣く
ホタル火灯す
セミお経上げる
とつぶやいていた。
雪深い北国に住む人々の願いは夏死ぐ事であった。この真砂も平成十年十月、神、仏と共に人々はこの土地を後にした。
北国新聞のあるコラムの記事から抜粋しました。福井県との県境にある大日山の谷間の林道の果ての廃村の跡地にこの文言を書いた看板が一つ立ててあったそうです。「つぶやき」と題して。
コラムの筆者の方も書いておられましたが、北国の寒い人里離れた山村に住む老人達は一人寂しく冬の雪の中で死んでいくのはとても寂しすぎて、夏に死ぬことが望みだったのでしょう。
人の望みというのが、厳しい自然の中で宗教家でさえも到達できないような涅槃の境地に至っていたような気が私もします。おばあちゃんはきっと夏に虫たちの泣き声やセミたちのうるさいお経の声に見送られて、冥土に旅立っていかれたのだろうと思います。筆者の方と共に手を合わせたい気持ちになりました。

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