黒や夜、闇に対する枕詞なのですが、なんとなく好きな言葉です。
調べてみると「ヒオウギ」という植物の種子の名詞でもあるのですが、現物は確かにとっても真っ黒でつやつやと光っていました。
漢字は「射干玉」と書きます。
漆黒の闇、なんだかそこには暖かさを感じます。現代社会ではそういう暗闇はなかなか存在しません。一度だけ体験したことがあります。長野県の善光寺さんの胎内巡りのときです。階段を下りて少し進むと全く光のない空間になりました。目を開けているのがわからないほどでした。その時に感じたのは「心細さ」と同時に変な「安らぎ感」でした。
私が「ぬばたまの」という言葉を目にしたのは万葉集の中の短歌の一首でした。万葉集が編まれたころの世の中にはまだこんな漆黒の闇があったのだろうと思いました。月の光なんていう淡いものがどんなに価値のあるものだったかと思います。
ぬばたまの闇を決して忘れてはいけないような気がします。それは現代では人の心の中に宿ることもあるように思います。

3