9/21 丹羽康博 展 @ L gallery
小さめな封筒の表裏全面に、びっしりとドローイング。ところどころ破れて穴があくほど執拗に塗り重ねられている。その静かな狂気を孕んだ封書は、ほぼ一日一通のペースでL galleryに届く。会期中も増え続けていく、そのletterシリーズを中心に public powerと題された「潰れた空き缶」や rayと題された手帳(全ページに執拗なドローイング)、twiceと題された二枚一組の大きめの作品、そしてgallery屋外スペースには雨風で崩れてしまう儚いインスタレーション。
過去作の資料ブックには白い紙を極限まで切り刻んだ作品(塩の山かなというほど粉々になっている)や、クーピーを先っぽだけ残し削りつくして全色混ぜ合わせた作品があって
「もともと彼は彫刻家なのよねー」と説明された
こ、これで彫刻なのですねっ
「これはまだ彼の中では彫刻らしさがあるほうよねー」
丹羽さんの過去作には他に「木のそばで葉っぱが落ちてくるのをじっと待ち、落ち葉が地面に触れる前にキャッチする」や「木のそばで葉っぱから水滴が垂れてくるのをじっと待ち、したたってきたら小瓶でキャッチする」などある。
なぜだか個人的に心に残ったのは
どこかの街の廃工場だかの屋根裏に古いソファーがあって四人掛けの一人分だけに綺麗な柄の布を貼り直してある作品。その位置に座ると窓の外には駅が見える。電車で来た人は自分の少し過去を見ることになる。
そして後日、別の展示では同じソファーの残り三つを綺麗にして、最初の一つは焼き払ってしまう。黒コゲで骨組みだけになった一人分と綺麗な三人分のコントラストが、胸に迫ってきた。
帰り際、玄関に真っ白なカンヴァスを見つけた。
「煙草の煙で描いてあるのよねー」
な、なにも視えないですねっ
「そのうちヤニが変色してくるかしらねー」
今は何が描かれてあるのか分からない
そしてきっと、何かが茶色く浮き上がってきたとして
それが何であるのかは分からない気がする
きっといつまでも僕には何も分からないだろう
それでも僕は、丹羽康博が美しいことをしているように思う。
名古屋市名東区本郷1-43
The Apartment LiF F-1
L gallery にて
会期は9.28 (日)までの pm1:00-8:00
http://l-gallery.jp/top.html
注・ソファーの作品は、正しくは布を貼り直したのではなくて、めっちょ丁寧に掃除したもの。だそうです。(コメント欄 参照)
めっちょ埃を落とす Dust off
からの Burn out だそうです。泣ける。

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