「目に見えないものは売れない」というマーケティングの鉄則があって、この公式はいつも当方の頭の中にある。音楽とヴィジュアルの結びつきということ。「昨日(西城)秀樹が夢に出てきたのよ。そんでシングル買ったの。」という言葉がレコード会社のセールスマンをしていた頃、俺が虹だった頃、札幌の地下街で女の子同志の会話が耳に入って以来、この公式を信じ続けている。
ある音楽を売るにあたって、その音楽がどのようにヒトにヴィジュアル的に訴えかけるか、というのが、制作上のキー・ポイントとなる。
「ジャズの女性ヴォーカルが日本の市場では受ける。」というのも定説だが、CDショップに並んでいるのは、いわゆる美形の女性ヴォーカリストで、ジャケットもいかにキレイかを競う、美女コンテストのような体をなしている。
DVDというメディアで、音楽を売る場合のことを考えてみよう。DVDであれば音楽にあわせた、ヴィジュアル情報をふんだんに提示できる。ただ商品を作るにあたっては制作コストが商品価格に見合ったものでなくてはならない。1枚3000円のDVDを1000枚売り、300万円の収益を上げても、制作・編集コスト、音楽著作権料、管理費、宣伝費、流通業者のマージンなどのコストがかかるので、この総コストを270万円(90%)以内に,できれば240万円(80%)以内に収めたいところだ。
音楽CDを発売する際のコストとしての音楽著作権料は6%(税込み価格×0.06)と考えて良い。3000円のCD1枚あたりの料金は180円ということになる。(厳密にはもう少し安く150円くらいとなるが。)これがDVDとなると映像制作費事態が高いのに、動画と音楽をシンクロするのあたってCDより高い料金を支払うことになる。
そこで当方が現在とりかかっているプロジェクトは、音楽DVDを作るのだが、映像を全てスチール写真に限定している。こうすると「静止画録画物」として扱われるため、音楽著作権料はCDと同じ計算式で出てくる。先例でいうと3000円のCDでも、3000円のDVDでも、音楽著作権料は同率6%、金額でいうと180円となる。
ヴィジュアル先行の市場が続いている昨今、質的に高いレベルのスチール写真を使用したDVD制作が制作会社のひとつの重要な、あるいは必要な手法といえそうだ。

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