現在、予防給付の訪問と通所(デイサービス)が介護保険の給付の対象から外されて日常生活支援総合事業(総合事業)に移行されています。総合事業は、平成30年度より全国一律に実施されました。その結果どうなったかというと、市町村(保険者)が独自にサービス内容や料金を決められる様になって、半数ぐらいの市町村は、料金の引き下げに走りました。残りの半数はいままでの国の基準と同じ設定にしています。訪問介護は、住民の多様なサービスとかで、国は有料ボランテイアを育成し、要支援者や事業対象者に訪問サービスする考えでした。しかしどの市町村もうまく行っていません。要支援者の生活援助があまりにも低いため、一部の訪問介護事業者は要支援者のサービスを断っている状況です。ヘルパーが訪問介護事業に失望し、他のパートに次々と転職しています。そのため訪問介護事業者はどこもヘルパーの人材が不足して、事業所の閉鎖も起きています。訪問サービスを「地域住民のボランテイア」でできるわけないと現場は、誰もが知っていました。しかし、社会保障審議会のメンバーである大学教授やエリート官僚は、机上の空論を地域支援事業に取り入れて、結果、失敗しました。実は地域支援事業には、過去には、特定高齢者施策というものがあました。全高齢者人口の0.5%を体操教室に通うのに、なんと年間数千億円が使われました。地域包括ケアシステムを声高々に提唱しておきながら、一方で地域包括ケアの要である訪問介護を追い詰めるのがよくわかりません。私も訪問介護事業所を経営していましたが、訪問介護は、世話好きで家事や料理が得意なベテランヘルパーたちに支えられています。彼女たちの仕事を奪って、要支援者の訪問介護費用を削減することがどれだけの介護費用の軽減になるのでしょうか。
財務省や財界は、要介護1、2を「軽度者」と定義して「多様な人材・資源を活用したサービス提供を可能とすることが効率的」「ボランティアなどの力を借りる仕組みへ転換していき、給付費の伸びの抑制につなげる」と唱えています。ですが、要介護1,2を「軽度者」という定義自体、無理があります。要介護1,2は歩行困難者や認知症が進んだ重度の方が多く、専門的な技術や知識がある介護スタッフでないと対応が難しいです。ボランティア活動と介護事業を一緒にすること自体に無理があるのです。

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