2010/7/28

涙が乾かないので・・・  生活

『涙が、なかなか乾かなかったので、席に戻れませんでしたわ!』



5年前の或る日、うら若い美人の彼女は、僕にこう言った・・・




彼女は僕の直属の部下で

男ばかりの職場でなにかと

暗くなりがちな雰囲気を和やかにしてくれる。

茶目っ気のある、明るい子だった。



彼女が、いつ部屋を出て行ったのか判らなかった・・・

ふと、戻ってきて言った言葉がそれだった・・・



二人しか座っていないデスクで、僕は一瞬言葉が出ない・・・

いくら恋愛関係はないと言っても・・・

若い女性から、いきなりそんな言葉を聞くとは思わなかった・・・

不意打ちとは、こういう時の事をさすのだろう・・・



しばらくして、落ち着いて事情を聞いてみた。

会社の人事に呼ばれて

リストラを宣告されたと言う。



その頃会社の業績が悪化して

全員で給料を大幅にカットして

この難状を打開しようと

数年頑張っている最中だった。



しかし、それでも改善せず

女性事務員を何名か

リストラしなければならないだろうという、噂が流れていた。

ある程度は覚悟していたが

やはり、それを現実の目の当たりにし・・・

しかも、本人の口から冒頭のような言葉を聞くと

やるせなさが、拡がってしまったのを、今でも覚えている。

その苦労をした会社も、数年前にとうとう無くなってしまった。





・・・・・その彼女と、今日、自宅近くの道でいきなり出逢った・・・

家は遠く離れているので、普段は出会うはずもないが

友達を訪ねて来ていた所だったという・・・



別れた頃は、まだ独身の彼女だったが

ちっちゃぃ赤ちゃんを抱いて

『3人目の子供で、全部男の子なんですよ・・』

と、いつもの屈託のない笑顔で話す、彼女に

幸せになったんだなと確信した。



僕自身にとっても一番苦しい時期で

それからも、これでもか・・・

と言うくらい辛苦が波を打って押し寄せてくる。

でも、その苦労を共にした子の笑顔を見れて嬉しかった。



『涙が、なかなか乾かなかったので、席に戻れませんでしたわ!』

この言葉は、自分の心の中に大切にしまっておこう・・・



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