2008/3/11

『卒業』・・はるか遠い想い出〜  

Shiozyさんの ブログコラボ 第三弾 『卒業』 に参加しました。


『卒業』 ・・・はるか遠い想い出〜〜〜

                   いっちゃん・・こと
                   10代初期の筆ネーム  文龍


『どうして、こんな事するの?』 

同級生の女の子が、むっとした顔をしながら何かを差し出した。

今日は中学校の卒業式!  

突き出された物は、ページ毎に同級生のサインがしてある、大学ノートだ。

『どうしてって、僕は君からノートを渡されたことも無いし・・・』


言いながら、その時ハッと気がついた。

ノートは、その女の子が持ってきた物ではなく

そのそばで、恥ずかしそうにしている、別の女の子が

卒業記念にサインしてくださいと持ってきた物だった。

目の前に突き出されたノートは、或るページの半分が無残にちぎり取られている。




・・・徐々に思い出してきた

僕は或る思いがあってその時、悪いけどサインは出来ないと断った。

そばにいた別の男子が、僕がサインしてやろうという事になったはずだが・・・


女の子は、ページの半分がちぎられているのは、僕の仕業だと思ったらしい。

でも言えないでいるから、別の子が世話を焼いたということ。

すぐそばにいた、例のサインをした男の子が

『すまん! 僕が書くのに失敗したからちぎった』と・・・





〜話はずいぶん前にさかのぼって、物心ついた時には、僕は父親がいなかった。

めったに帰ってこない母親が、お金を仕送りしてくれて

祖母が畑で、米や野菜を作って兄と僕を育ててくれた。

母親が帰ってくると、その晩遅く僕達が寝ている隣の部屋で、祖母と喧嘩の声がよく聞こえてくる。

『子供を連れて死んでやるぅ〜』

幼児期の僕は、その都度決まって夢を見る・・・

井戸の上の方から体がクルクル回りながら、下の方にゆっくりと落ちていく

上から見ると底は柔らかいスポンジのような物

落ちても安心だ・・・

しかし! しかしだ!!  底に近づくにつれてその柔らかな物が、鋭くとがった針のような物に変わっていく・・・

いつも変わらぬ夢とはいえ、幼い自分は毎回夢の中で泣き叫ぶ・・・助けてくれぇ〜


それから、しばらく経って勉強がしやすいようにと、家の外にその当時流行の一坪ほどのミニハウスを建ててくれた。

僕は一人でそこで過す毎日だった。

ハウスの周りには何も無い、竹林も何も・・・

しかし、夕方になると生竹を裂くような音が鳴り響く・・・パン パン パン

これって、なんの音なんだ???  少し大きくなって知った。

生竹を裂く音がして、生臭さがかすかに・・・霊が出現する前兆・・・



強風の吹きすさぶ或る夕刻、いきなりガチャンと大きな音がした。

僕は瞬間的に布団をかぶった。

恐る恐る布団をはぐってみると、窓ガラスが割れて、それがきれいにまんべんなく部屋中に散乱している。

まるで誰かが偏らないように敷き並べたように・・・


小学校低学年から、兄と一緒に朝の新聞配達をやった、僕は六年間、兄はまだ長かった。

小さな小学生が、古ぼけた大人用の自転車に乗る様は、傍から見ていたらおかしかっただろう。




〜世間では、中学校の卒業でみんな浮き立っていたが、僕には卒業というものは無い。

いつも通りの生活が続くだけだ!

そんな事情をノートを持ってきた女の子に言っても始まらないし・・・

ただ 『悪いけど・・』と言うしかなかった。

しかし、サインを断った時の彼女の悲しそうな顔は一生忘れない。


みんな卒業でうきうきしている中で、一人だけ悲しそうな顔をしていた君に言うよ!

  ご め ん ね ・ ・ ・




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