some words with a little girl あの娘とのやりとり
etching on paper 2004 / image size 8x10cm Ed:30
どのように楽しめるの?
エッチングは覗き見る極めて私的な絵画装置かなとボクは考えてます。なので文学的鑑賞がマッチするというのを前回書きました。そして、そのためのナビゲーターを努めるのが作品のタイトルです。これが一編の詩として鑑賞者を誘えばいいなと思うの。大事なのはタイトルに絵の説明をさせないこと、作品を秩序づけず、逆に何のことだこの絵にこのお題でいうカタチで鑑賞者に提示したいと思うのです。これはどういうことかと言えば、皆さんに一編のコント(イマジネールな小話あるいはショートショートな短編)を鑑賞者自身で組み立てて遊んでみてくださいという提案なのです。
それは同時に、他人のプライバシーに介入してくような密やかな愉しみというか?大きくパンチのある絵画じゃこういう気持ちになりにくいでしょ鑑賞者も。
図柄は正確に描くことを故意に避けてます。逆転された図柄を描かなければならないことなどもそうですが、制作時のっけから作為は捨ててかかります。こんなの仕上がりどうなるか解んないんだから結局。最初プレスして用紙を版面からペロって剥がす感覚は、ガキの頃駄菓子屋で体験した押しクジ(平たい箱に幾つか窓があって、それを押し破るといろんなものが出てくる)を思い出します。やる気のなさを追求した無責任な絵画作品なんだけれど、それらしか持ち得ない味が出来上がればそれが個性になってくれる。
Dwarf in red 紅い小人
etching on paper 2005 / image size 8x10cm Ed:30
版画面を囲んだマットは窓、プレスされた時の用紙に出来た陥没(これはプレートマークと言います)、そしてエディションナンバーに作家のサインなどは物理的にエッチングの版画としての個性を盛り上げます。例えば、このボクの作品なら 4/30 と記されてるのは30枚限定の刷りのうちの4と言うことね。
実際に刷られイメージが乗っかる用紙の選択も版画制作において快楽のひとつです。こいつの選択ひとつで作品が引き立ったり逆だったりします。ボクはココはケチらずに、仏のベランアルシュ紙か伊のファブリアーノローマのどちらかを使っています。インクも大事ね、コレは仏のシャルボネール。
あと版画はシート(額装なし)で購入し、所有者本人が自身の趣味でインテリアなんかに合わせ額装・編集する愉しみもあるね。
最後に、版画っての漠然と女性向きかなって思うこと多いです。実際にいい女性作家多いように思う、何故かな様々な制作過程を経て出来上がるから裁縫や刺繍技術などに似てて、細やかなスキルや穏やかな制作態度を要求されるからかな?ボクのエッチングはそういう意味じゃ例外だけれど。
女性とか銅版画にどんどん挑戦すればいいと思います。まあまあしっかりしたプレス機、これは必須ですが10-15万くらいかな。あと細々した用具はそれほど高価じゃないですからOK。
以上、Etching というものの楽しみ方でした。

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