日本の常識は世界の非常識?(竹村健一)
ここ5〜10年間、珠家やモナリザで巻き起こった細かな事柄を箇条書きにて記すことで、ボクやエメロンの声明文で検証とさせてもらえれば幸いです。興味のある方はぜひ一読ください。
場所が分からない問題
まずコチラの地図2点、珠家を営業してた頃に店頭に置いたりウェブに上げていた店舗への辿り着き方を克明に記した地図です。当時現場で多くのお客さんが「店の場所が分からん!」と女将ゆきにクレームがあり、それらの対応のために制作しました。同じことを当時カフェ営業してたモナリザでも行いました。
まあ、その後はクレームも減りましたが、ちょっと違和感が残りました。なぜなら、店舗はずっとそこに建っていて動きませんし、鬼ごっこじゃあるまいし逃げもしませんから。訪れようとする側の人間が、考え無しに下手に動きまくるため間違ってしまい、店舗に辿り着けないだけなのですよね。
駐車場が分からない問題
駐車場の問題も大いに悩まされました。酒類を売る珠家はともかくモナリザには車がガンガンやってきました。3人でカフェするのに3台でやってきたり、いったい何台の駐車スペースが必要なんだ?バローやイオンやジャスコと違いますからね。当時のモナリザは店頭を駐車スペースに当ててました、ランドクルーザーみたいなのが止まるとカフェというよりも中古車センターの様相です。さすがに我慢出来なかった我々はそのスペースを封じ、店舗より少し離れた別の場所に店用のパーキングを3台分確保し、その代わりとしました。
こんな家族も来店しました。モータータウン豊田市より成人をゆうに越えた娘さん連れ熟年リタイア夫婦でしたが、そのパーキングの場所が分からずに店頭でお母さんがキレました「お父さん(ドライバー)が可哀そう、振り回さないでよ!」と。モナリザ以前におはらい町などのパーキングでも同じくストレス100%だったご様子です。しかし店側となると、そういうストレスをぶちまけられるのって暴力に等しいです。お母さん、ココは貴方達の家じゃないし住み慣れた地元でもなく、なれない旅先だからそれは思いどおりばかり行きませんって、不便さも楽しんでくださいよ非日常の見知らぬ初めての旅先なんですから。それに GW に自家用車軽快に転がして快適な観光など出来るわけが無いでしょうにね?
現在
そんな時間経過の中で起ったいろいろな違和感たっぷりな出来事や人々に多くを考えさせられました。またそれとは別ですがエメロン自体の変化などの事情で、珠家も閉店、モナリザのカフェ業務も終了という運びで現在に至っています。我々は重い荷を下ろした気分で大いにハッピーです。
珠家を切り盛りしてたゆきは現在実家の朝熊町にてサトナカ工房でスタッフを束ね、同時にライフワークの農耕に多くの時間と自身の未来を当てています。ボクは相変わらず人があまり欲しがらないものを拵えつつ自身の好奇心を満たしてます。他の方々と組んでのバタフライローズ他のデザインワークも忙しくしてます。ゆきとのエメロンではサトナカの販売を中心としたショップ・モナリザと1楝貸し民泊たらちねを稼働させています。
そして今回
これを記そうと思ったオモシロい出来事がある場所で起ったのでした。先週末のお話しです。伊賀上野でのとある茶会にボクもデザインや設えなどで参画しておりました。会期の二日間を終え現場を仕切ってくださった陶芸家のYさんにどうでしたかと訊ねました。ボクは今回はバタフライローズの現場に駐在、茶会現場の動向が解らなかったので。
ゲストの方がボクの設えに添えたキャプション(造型についての簡単な説明文)の文字が小さくて読めないとのお小言を頂いたとのこと。最初はまたか、と思いました。ボクのデザイン物はタイポと余白とのハーモニー(調和)で決めるものが多く、字が小さいという指摘を受けることが多いから。
しかし茶会のそれはボクなりに考慮・配慮したサイズを当ててただけに、少し違和感が?
字のサイズは、新聞や文庫本と同等あるいはそれら以上のもの使いました。そんな大きさの文字にも関わらず、それでも小さいのかしらと?
現場のスポットライトのみの演出も手伝ってのことと思いますが、しかし不思議でした。少し思い当たったのがゲストの性別に年齢層です。昨年は現場詰めだったので予想は出来たのですが、熟年層のご夫人がすこぶる多くお見えになるんですね。
どういうことかというと、多くの方が老眼だと推測されるんですね。それで探偵気分も手伝ってエメロンのスタッフやその母親さんとかに聞き取り調査を試みたんです。以下、質疑&応答です。
タケシ
Tちゃんはよく友達とかと一緒にさ、名古屋とかにショッピングや展覧会など行くだろ。その時絵のキャプションとか読むのに困らないかい。やっぱり老眼鏡とか持ってくんだろ?
Tちゃん(50歳)
私はまだ近眼なんで老眼はそれほど進んでないから大丈夫なんよ。ほやけど一緒に行く友達がそれらを読めへんので私が読んで説明するんよ。
タケシ
えっ、それってやっぱりお洒落してのお出かけなので老眼鏡はかけたくないってことか?普段は居間でこたつでみかん食って女性週刊誌読んだりする時は絶対老眼鏡かけるよね。
Tちゃん
そうそう、そういう人私の母親の世代にもすごく多いのよ。
タケシ
ありがとうね。やっぱり図星か! お小言の正体はコレか。
ああココでもまた最近の日本人特有の資質が応用変化・進化した「おばはんの常識はボクらの扱うビジュアルデザインの非常識」である検証がなされたのです。
ビジュアルデザインってコミュニケーションツールですよね。特にボクの扱いたいそれらは、文字が大きく読み安くあることが深きコミュニケーションに導けることだとボクは考えておりません。説明よりも造型(形や切り口の不思議)を通して何かを語らせることを自身の挟持とし、それを優先に考えています。
簡単に言えば、解りやすさよりカッコ良さを重視&優先型なのです。このようなボクの個性でもって他と勝負したいなあと、これはこれで困ったもんですが・・・とにかく得意なことでもって人を喜ばせたり役に立ったりしたいなあと。
やっぱり上に記した熟年の方々とボクの仕事との接点はホント生まれ難いなあと今回もまた改めて感じ入った次第です。しかしそれではボクの主張が一方的過ぎるようにも思われますので、以下の趣向をひねり出し次回の茶会や展覧会には当て嵌めようと思っています。
前略、和服に洋装でお洒落してファッション性重視で華やかに茶席にお越しになられたい熟年の皆々樣方に。
おかけになられたくないかとも存じますが、来年から設えとともにコチラ(老眼鏡)をご用意いたしてお待ち申し上げておりまする。甘味を引き立てる苦みの御抹茶だけでなく、感性も動員され拝見の方もお楽しみ頂き、茶会を存分にお楽しみくださること、こころより御願い奉りまする。
最後に
これらはただ不満をあげつらいたいのでなくて、次の仕事の方向や動向の大事な糧になってくれるものだと思うのです。ただこういう人達に報えていくことでの共存や未来を選択したくはないなと。このような理不尽に添い遂げる商いなんて虚しすぎる。自分達の信じる物を信じるカタチでもって、通じる方々におとどけしたいなあと思うんですよね。
とは言え、幸いにもサトナカなどは、広い年齢層のお客さんのご利用で成り立っています。ボクたちの業務の中では珍しいケースで、これはマグレと言ってもいいかもです。ひと言付け加えると、サトナカなどにしても好奇心で商品にアプローチしてる若い層と、周りに乗り遅れたくない熟年層との違いも見え隠れもしてきますが。一人で来店する人も多いのが前者、後者はだいたい群れをなして複数名ですからね。
ネット炎上や個人的な集中砲火にヘイトムーブメントなど、311 以降の日本人の現在のメンタリティが炙り出るシーンも多いです。おもてなしって仮面をつけた便乗商売の多さ。おもてなしを取り違えた、クレーマーを煽る甘やかし。相手に不満を訴えることが先行で、自分のことを疑ってみたり鑑みたりしなくなってしまった日本人の増加は確実にあると思います。
こういう免れざる事態の小さな細部もまた、我々に何かしらの示唆を与えてくれるものだと思います。分かれ道にさしかかった際も、こっちにだけは行っちゃいけないよいうようなね。
長々失礼しました。走り書きなので荒っぽい文面になりました。これで終わりにせず、ブラッシュアップさせて、もう少し解りやすい文面に整えて行きたいと思ってます。商いって品物(提案にサービス)とマネー(報酬)を媒介にした相手(与え手とお客)とのこころのやり取りだと思っています。それは気持ちの晴れるゲームでありたいですからね。

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