年頭ご挨拶
いや年も明けて少し落ち着くと、解放されます。年末は人のために仕事してる感じです。お歳暮商戦にオンライン販売にサトナカやうどんが参戦してますから当たり前です。だからそれらの商品が「傍・はたを楽・らく」にすることでボクたちに換金され、生活の糧になるんですよね。「はたらく」という事は本来そうですよね。でもボクの場合「自分の仕事」もしっかりやらないと、精神の衛生上良く無い訳です。労働そして換金には直結してないけれども、自分のやるべきこととしてのクリエィティブですね。元日からアタマはトップギアでしたが、今日から身体ともに start working です。
それで年頭、のっけからなんですが、こんな宣言を立てて自らを鼓舞してみようと思います。
「Background design 宣言」です。バック・グラウンド、つまり「物事の背景からのデザイン」ということです。何度もここに記してるように、ボクはデザインはただの表層を飾るビジュアルだと考えていません。
少し気取りますが「背景論」として、何回かに分けて書きボクのデザインの仕事をまた別の角度から皆さんに感じてもらえれば幸いです。
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背景論 Background design_01
一点の絵を成り立たせる重要な要素に「背景」、同じく一点のデザインをまた成立せしめるに大事なものに「余白」があります。これらをどう扱うかが勝負どころです。昨今モノを作っていて特に念頭に置いてることがそういう Background「背景」であるなと強く思うのです。
具体的に既にもうここに無くとも、かつてそこに在ったもの(失われた時間や物事)も今ボクの言ってる「背景」です。そうなのと思う方は、ボクの web site や EMELON on line shop を参照してもらえれば幸いです。解りやすいものでサトナカなどは、かつてあった地方都市伊勢の中の、今は無くなってしまった小さな集落のファンタジーをデザインし現在に別のプロダクトとして甦らせたボクの最初の Background design における仕事です。ここではそんな事例も商品そのものとはまた別の角度から紹介し、皆さんの理解に繋げられればと思っています。
http://www.emelon.net/satonaka/index.html
なんだデザインの話かと思うでしょうが、いやそれだけに非ずで、これが人の成り立ちや文化や商いにも当て嵌められるとは思うから、今こうしてここに書き留めることでもう一度自分に言い聞かせてもいます。
まず誰もがモノを見る時に大事にしてるのが第一印象・first impression です。これでグッと来て感性が動かされれば、そのモノは「いいね!」なわけです。しかしそこまででは、それは表層に過ぎない。そこで、よくその「いいね!」の核心にせまりたくなるのです。美味そうだと思うフルーツが目の前にあれば、皮をむいて食べたくなりますよね。もう一歩踏み込んだらそれらの原産地にだって行く人もいるでしょう。それがラーメンならば、そのスープの成り立ちなどに迫りたくなったりね。
いいなあと思うものや、美味そうだ、素敵だ、何だこれはというモノには何か解りませんが「そうなってる背景」が見え隠れし、ボクのこころを揺さぶります。そしてその真相にたどり着くと、なるほどそういうことだったかなんて思う。真相にたどり着けずのままもまた善しという例外もあるとしてのお話ですが。
モノに限らず、人間だっておもしろいこと考えて、それを実践して生きてる人は、その人の持ってる背景において違うと思うのです。彼らは、おしなべて彼ら独特の文法に乗っ取って、独自にそして自由にやってる感があるものです。
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さて今回は、ボクも住んでいた 80'sのNYのダウンタウン East village でのお話です。何度かここでも書きましたが、80's初頭まだスラム街だったそのエリアに、安い家賃に広い制作スペースを求めて、貧しいが楽しい若いクリエィター達が集まりニューウェイブな町を形成して行きました。そんな真っただ中な時間の中にボクもいました、まだ20代中盤の若造でした。ボクより少し先にNYに来て、ヘアーサロンで髪の毛を切っていた友達にアキロウとアツシのコンビがいました。彼らとは1984年ボクがその町にたどり着いた時に作品を見せたら「いいね!」ということで友達になったのでした。
毎夜のごとく彼らや彼らを取り巻くアメリカ人やヨーロピアンと遊びに出ました。当時彼らの生み出す刈り上げでエッジの効いたヘアースタイルは、小さな East village という町を圧巻してました。ボクたち日本人トリオは同じヘアースタイルに同じファッションで身を固めては、Barで酒を飲み、そして町を闊歩しました。そんな時見知らぬ通行人やBarの客に、君たちそのアタマ何処でヘアーカットしてるの?なんて何度聞かれたかしれない。そしてそんな人々が、数日後彼らの店に来て、ボクたちと一緒のヘアになって喜んで帰って行く。そんな彼らとはまたバーやレストランで出くわす、その友達や彼女もまたヘアースタイルを通じてボクたちと繋がり、それが町の要素として拡大して行く様は見てて爽快でした。
主役は彼らの生み出すヘアースタイルと彼らでしたが、彼らの店にボクの絵も当然掛っていたから「この絵を描いたタケシだ」と沢山の人に紹介されました。お客のひとりの女性に誘われ彼女のキュレートする3人展に参加したこともありました。ボクなりにささやかながら、そんなシーンや時代の脇役を勤めてたんだと今振り返ると思い出されます。日本からツテも無くやって来て、英語も話せずだったボクにも居場所があったということで、演じる役柄があったんですから、懐深ったですよね当時の New York って。
残念ながら、ボクと同じ歳だったアツシは13年前に、そして6歳上のアキロウはこの夏他界しました。残されたボクや他の仲間は、何事に解放されることもなく、かいがいしくも日々働き続けています。ボクなどは、他の人々に較べればやくざで遊びのような仕事をしながらどうにか日々をサバイバルしてる有様です。
さて、話しを「背景」に戻しましょう。上記した NY のこと、これがボクの言いたい「背景」で「彼らが自分たちの店でやってることの背景」で「やってることの背景の深さ」今日のお話の主題です。
つまり、彼らは店で髪の毛切ってヘアー作ってるだけじゃありませんでした。店から飛び出しちゃってました。町のバーやレストランでもヘアーカットこそしなくとも、ボクなんかも混じって、集って飲んで楽しく話してるだけでスゴい自分たちの仕事をアピールしてた。そして、それを見て知った客が数日後に店にやってくる。そしてヘアースタイルとして各自の生活に持って帰る。
それが今ボクがここで言ってる「背景のあるビジネスモデル」なんです。町での生活や、そこで起こってるカルチャーや、ファッションに直結してるんです。そんな背景があって、それから様々な人のアタマが彼らの生み出したヘアースタイルを乗っけて最終的に出来上がってるってことなんです。
日本そして地方都市伊勢、こういうこと中々起こりそうに無いです。日本や伊勢の美容業界を見れば、もう全然違いますその背景において。経営者が集まって、美容業界ムラを形成し経営のお勉強に、はたまたスキルの全国コンペ。なんで同じ業界で集まんなきゃならないの?逆でしょ、火花散らしてケンカしてでもファッションや文化生み出しましょうよ。そして、町へ繰り出して、美容何てものもっと大きく捉えて別なものと向き合い、何か今までに無かったモノ産みましょうよ。それが文化・カルチャーだと思うんです。
ボクの友人や知り合いにもそういう美容業界の人達がいるし、そういう人たちを批判したいんじゃないのです。かつてのNYがそのまま伊勢や日本の地方都市に簡単に当て嵌まるわけないし。ただ、多くの若い美容師さんやこれから美容師になろうとしてる人達、全ての若い人たちにそんな既成のビジネスの文法教えたって駄目だと思うの、これからは。もちろん既成や伝統や歴史の中にも継承すべき優れしシステムはあるということを前提に言っていますが。
いやと言うか、モトイ。そういう美容室だけじゃないんだろうから、一括りにしちゃ駄目ですね。今までに無かったような美容室やそれをドライブする若い人出よ。というか、若くなくってもいいから何かおもしろく変貌を遂げつつあるビジネスモデル出よ。そんなふうに思うのです。クリエィティブってことをやってる醍醐味と言えば、無かったモノやアタマひとつ抜け出たモノを生み出すことなので、ボクはついついそのように考える質なのです。
「背景論」ひとまず滑り出しましたが、どこまで本質に迫れたかは不安です。ブログなので筋書きも荒く、構成も甘く、読みにくく解りつらいとも思いますがとにかくここでは勢いで書いていきます。書きながら間違いや論点に違和感があれば、その地点で修正して行きたいと思います。この記事でマネー頂いてる訳じゃないし、悪しからず。
とにかく書きたいことが出尽くした地点で、また改めて構成をしかっりしてまとめ、自分なりに清書したいと思っています。では皆さん、お互い今年もしっかりやりましょう。いろんな意味で日本は寒いですけれど。
PS: 上の画像は、Background design のデザインを起こしてみました。これラフなんですが、コレはこのまま採用もありかな。イメージとして古い欧州の磁気の皿の裏側にマークされてるスタンプみたいにあまりキッチリ仕上がって無い方が味がありますね。もう一枚は、その当時の New York のカット。こんな感じで遊びほうけてました。天国のアツシ、アキロウに合掌。

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