夜の川と言っても私が見ているのは早朝5時ころの川です。この季節にこの時間だとまだ川縁は暗闇に沈んでいます。人の文明が夜の闇を駆逐して明るい夜に替えてしまって一世紀くらいは経ったのでしょうか。昔の行灯やろうそくの光は室内でも片隅に深い闇を作り出していて、そこにはおどろおどろしいものが生まれては消えていたのだと思います。
妖怪やお化けや幽霊のようなものたちは、そういう闇の中に生きていたように思います。物理的に光の外にある闇という部分がある意味健康的にそういうものを生み出していたのだと考えられます。現代の闇は人の心の中に増えているように思います。そういう意味では夜の闇は人を本能的な生き方に導いていたものなのかもしれません。本能的な生き方ができにくくなった現代人は心の中に闇を作り出さざるを得なかったのかもしれません。
健康的で本能的な「闇」を象徴するものが妖怪やお化けなのかもしれないななんて思ったりもします。ゲゲゲの鬼太郎のテーマソングの中の「♪夜の墓場で運動会♪楽しいな、楽しいな、お化けにゃ学校も試験も何にも無い♪」という言葉を子供のころの私はうらやましく思って聞いていたものです。
夜の川では水辺に棲む鳥なのでしょう、得体のしれない鳴き声を響かせつつ水が滔々と流れ行きます。水の流れだけは光も闇もともに含んで流れ行っているようです。

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