子供のころのことで以前ももしかしたら書いたことかもしれません。
私の父は市役所に勤務していました。移動人事で何度も部署が変わりました。父はプライドが高く社会教育というものに情熱を持っていた人なので、それ以外の部署ではふてくされて仕事をしていたような感があります。
もちろん基本的にはくそ真面目な性格なので手を抜いたりしていたわけではないのですが、そんな気に入らない転属先の中でも最も気に入らない様子だったのが「衛生局」という部署でした。
上役ににらまれての嫌がらせ人事だととらえていたのかもしれません。要するにごみ収集を専門とする部署でした。ところが子供の私と弟からするとこの部署の父の仲間となった人たちが一番人間として尊敬できる人たちでした。
普段汚い人に嫌がられる仕事をしている人たちが一番優しい包容力にあふれる男たちだったのです。他の部署にいたころには全くなかった子供たちを連れての釣り旅行や仕事先の見学など、どこでも父の仕事仲間の人たちは暖かい気持ちにあふれていました。
彼らを見て私は思いました。人に嫌がられる汚い仕事をしていても、それだからこそ心の中はとても綺麗なんだと。後に職業に貴賎なしという言葉わ知りましたが、逆に私は綺麗な人に尊敬されるような仕事をしている人たちこそ、その人間性は疑うべきものなのかもしれないと思うようになりました。底辺の仕事をしている人たちの心根は間違いなくきれいなのだと今でも確信しています。
父は最後は市立美大の事務局長という綺麗な仕事に就いて離職しました。

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