NHKの大河ドラマで中村錦之助さんが主演で徳川家の剣術指南役柳生宗矩の生涯を描いた作品でした。今では幻の作品でNHKでもアーカイブが紛失していて二度と観ることはできないようになってしまいました。
今でも覚えているのは徳川家康の前で柳生石舟斎が「無刀取り」を披露するシーンです。相手役をする中村錦之助に対して石舟斎がおもむろに懐から紅を取り出して、息子の頬に紅を指してやるわけです。石舟斎いわく「悪しき顔色で人に不快な思いをさせてはならない」それは「無刀取り」の精神にも通じる一つの教えなのですが、画面の中でその紅がとても赤く鮮やかだったことを覚えています。
人に不快な思いをさせない、敵を作らない、相手に戦う気を起させない、それが「無刀取り」の極意であり、それからの徳川幕府の政策の根本理念にもなっていくわけです。
武道という戦う技法の中からこういう考え方が生まれるところに日本人の特異な精神風土というようなものがあるような気がします。根底には人の命を慈しむ心があるようにも思います。

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