春の坂道 という名称のNHKの大河ドラマが昔、ありました。何かNHKのミスでその番組の映像記録は消失してしまっているらしいですが、柳生但馬守宗矩という剣術家の生涯を描いたドラマでした。
柳生宗矩という人は江戸幕府を創設した徳川家の剣術指南役だった人なのですが、「無刀取り」という剣技を極めた人としても有名です。彼が父親である柳生石舟斎とともに徳川家康にその剣技を披露する場面が忘れられません。
父親は息子の頬に紅を差すのです。緊張で顔面蒼白となっている息子のほほに紅を差す父親の姿。どんなときにも相手に不快な気分を与えてはならない、それが無刀取りの極意の一部なのだということを、剣技披露の場を借りて息子に教えている・・・という深い場面でした。
その頃のカラーテレビの薄い色の画面の中で紅の赤い色がとても印象的でした。無刀取りの剣技の再現もとても実際のものに近く見えて迫力満点だったのも覚えています。
剣というのは人を殺す道具ですが、人を生かす「活人剣」という考え方を元にすれば抜かずに相手を制したり、人の能力を活かす方法も教えてくれるものなのだということをその後、いろいろと文献で学んだりして、わかっていったものです。

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