弘法大師様が講話のようなことをされていたのかどうか史実では明らかになっていないけれど、霊視の中で視たそれは聴衆を集めてお話をなさっているお姿でした。
そして、その話の途中から「お前の話なぞ認めない・・・」というようなことをわめきながら立ち上がった男の人が今回の霊視相手の前世の姿でした。大師様はその人に後で一人で自分の所に来るようにおっしゃってその場から帰らせました。
そして、その男の人が夜中に大師様の所へ行くと大きなお堂の真ん中に蝋燭が一本だけ点いていました。戸は締め切られていて、誰もいないお堂の中で大師様を待っていると、突然蝋燭がふっと消えてしまいました。
無明の闇。その中で大師様の声が聞こえてきました。「何ものも信じない貴方の心はこのように無明の闇に閉ざされています。どう感じますか?」・・・「何も感じない、怖くなぞ無いぞ!」そう叫ぶ男の人の前に無明の闇が広がります。一時間ほど経って、蝋燭がまた点きました。
男の人の心に光が差し込みました。そのとき男の人の心がどう和んだのか、誰にもわかりません。でも、少し次の日からの彼の態度が変わって行ったのは本当の事です。
現世の彼女は施療が終わるとご自分の事ではなくて、娘さんの将来を聞いてこられました。しかし、私にはこの方が今「無明の闇」の中におられることがわかっていました。それで、何とかこの弘法大師様とのご縁のお話をしましたが、そのときになってこの方がS学会に入信されていることがわかりました。
「それでは弘法大師様を信じることはできないですね。それでは好きになってあげてください。そして、弘法大師様が貴女の前に連れてくる人がおられるはずですから、それがわかったら信じてあげてください、その人を。人を信じるということを少しずつ始めて行きましょう。」そうお話して施療を終えました。
人に手ひどく裏切られて信じる事が出来なくなってしまった人の心というのは「無明の闇」に閉ざされてしまっているのだろうと思います。でもいつか、蝋燭一本の光でも差し込んでくることがあると信じていたいです。

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