昔々ある所に身体が大きくて力の強い僧侶がいました。頭も良くて津からもあるから修行しているお山でも大将のような立場にいました。でも集団にいるのはあまり好きではないので、一人で修行をしていました。
あるとき山中で修行をしていると、突然黄色い小さな生き物が飛び込んできて彼の着物の懐に飛び込みました。少し経つと、山の猟師がやってきて「お坊様、こちらに子狐が逃げてきませんでしたか?」と聞きました。「いや、そんなものはやってきておらんぞ。」お坊様はそう猟師に告げました。「そうですか、じゃ別の方へ逃げたか・・・修行の邪魔をいたしました。失礼します。」という感じで猟師は去っていきました。
お坊様はそのまま、山中に駆け込み猟師の去ったのとは別の方向へ走りこみ、随分と登った辺りで懐から子狐を取り出して放してやりました。
それから子狐は恩を感じて親狐やその上のお稲荷様(狐の上役のような神様)といっしょになって、その荒法師を助けるようになりました。人間関係の機微に疎かった彼が、人に嫌われることも無くなり、出世をして人に尊敬される僧侶になれたのは陰ながら彼を助ける狐の力があったからのようです。狐自体は生涯、猟師には追われ続けるはめにはなったようです。
今世で荒法師が守護している方は、この狐の守護を知らず、また狐を不気味な憑き物のように感じていたのでその守護の力が及ばない結果になっていました。お稲荷様系の人は守護されるとてきめんに運勢が良くなったりするので、稲荷社には参ったほうがよいのだろうと思います。荒法師のみの守護では、女性の立場では苦労する部分も多かったろうなぁと思いました。

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