昔のゲゲゲの鬼太郎は出動するのは妖怪ポストに子供達からの救援要請が来てからということになっていました。
でも、何となく思い出したのは鬼太郎が出動するのは、人が古来守らなければならない結界を踏み越えて入り込んだり、古くからの仕来たりを守らなかったりすることで土地の妖怪が怒って、事件を起こして鬼太郎が解決するというストーリーになっていたような気がします。
日本に秘境なんていうものは無くなったとは言いますが、それでもその土地は目の前に開発されてあるけれど、人のその心の中に踏み入ってはいけない土地としてまだ認識されている秘境というのはあるように思います。さりげない日常の影の部分にある古来からの結界で守られている地というのがまだあるだろうし、人が守り続けていかなくてはならない祭りや儀式というのが日本の各地でひっそりと存在し続けているように思います。
水木しげるさんは、そういう事の大切さを昔からよく知っていたのだろうと思います。そして、漫画を使ってそれを人の心に残そうとしたように思います。少なくとも私の心にはしっかりと残されました。人の分け入ったことの無い茂みの奥にひっそりと残されている石像があったりしたら、私は近寄らないでそこを元の通りに隠して立ち去るだろうと思います。心霊スポットと呼ばれるところに面白半分に遊びにいくなんていうことが、普通に行われていますが、見えない世界の因縁の恐ろしさを知らない「馬鹿」がすることだと思います。
妖怪研究なんていうことが盛んに行われるようになりましたが、ゲゲゲの鬼太郎で育った世代が始めていることのように思います。京極さんや荒俣さんなんかが良く知られていますが、彼らの中にはそういう「禁忌」を畏敬する心があります。彼らがそういう意味の啓蒙もしていってくれるといいのですが、それについては彼らの中に徒労感があるように思います。言っても無駄、と思っているのだろうと思います。
古来から守られているもの。禁忌とされている仕来たり。立ち入ってはいけない場所。そういうものを大切にする心が人々の中に少しでも残っていってほしいと思います。

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