土井隆義さんの講演を聞く機会がありました。
*筑波大学教授。専門は社会学。
とくに現代の若者が抱える生きづらさの内実とその社会背景を研究している。
講演より。
「1970年代の若者層は、充実した生活を送るために大切なもの」は、経済力だった。
血縁や地縁といった共同体・社会の抑圧力の強さに
「不満」や反発を覚えていた若者の代弁者は、
尾崎豊であった。
とにかくもう 学校や家には 帰りたくない
自分の存在が 何なのかさえ 解らずh震えている
15の夜
盗んだバイクで走り出す 行き先も解らぬまま
暗い夜の 帳りの中へ
誰にも縛られたくないと 逃げ込んだ この夜に
自由になれた気がした15の夜
今は、人間関係における「規制緩和」により、自分の意思に反した人間関係に縛られることがなくなり、「不満」に由来した人間関係の悩や心配ごとは減ったが、それに代わって
「不安」に由来する人間関係の悩みや心配ごとが増えてきている。 今日の若者の代弁者は、
浜崎あゆみに見ることができる。
どうして 泣いているの
どうして 迷っているの
どうして 立ち止まるの
ねえ 教えて
いつから 大人になるの
いうまで 子どもでいいの
どこから 走ってきたの
ねえ どこまで走るの
居場所がなかった 見つからなかった
未来には期待出来るのか分からずに
「不満」と「不安」
若者のカリスマといわれた尾崎豊と浜崎あゆみです。
その時代の若者たちの代弁者といわれたふたりの歌詞から、時代がかわってきているのが見えてきます。
現代の女子中高校生のストレスは…。
1位 人間関係(友達)
2位 勉強
だそうです。
講演を聞きながら、人間関係の
光(人間関係を強制されなくなった)と、
影(友達を自由に選べるということは相手も同じである。いつ自分を選んでくれなくなるかもしれない)といった人間関係のリスク化が今の社会背景が影響しているのだと感じました。
演題は
「キャラ化する/される若者たち」でした。
1990年代後半の規制緩和・自己責任論が職業だけでなく、人間関係もが自由化、流動化され、かつてのように制度的な基盤が人間関係を保障してくれなくなったと言うことにつながります。相手を自由に選択出来る自由は、相手から選択されないかもしれないリスクとセットです。だから、常に一人ぼっち(孤立)することに不安を感じてしまう。と、土井さんは述べています。
では、何故孤立することが不安なのでしょうか?
それは、今自分がいる場所(狭い人間関係)
そこにしか、人間関係がないから…。
そこにしか、場所がないから…。
そこにしか、居場所がないから…。
なのかもしれません。
自由化と自己責任の時代がもたれした「人間関係の重み」から、
今の若者(子どもたち)の置かれている姿が少しわかったように思えます。
多方面の視点から、社会を見る。
興味深い講演内容でした。

5