昨日テレビで、
「アースクエイク」という番組を見た。
これは近々来ると噂される
首都圏直下型地震が発生した際の出来事をシュミレーションしている。
もし震度7の地震が首都圏を襲ったら・・・という話は、決して絵空事ではない。昨年起こった
姉歯元一級建築士による
耐震偽造問題で、世間の人々はこれまで以上に我が家の耐震状況はどうなのかと大きな関心を寄せている。
これまでは聞いたことがなかったあるいは知っていても詳しくは判らなかったと思われる
「耐震強度」という言葉を広めたのもこの事件であろう。
姉歯氏によって偽装されたマンションやホテルの数は80棟以上にもおよび、その平均耐震強度は建築基準法の
耐震基準1.0を大きく下回る0.5。中には0.15と15%の強度しかないマンションもある。
分譲マンションに住んでいる人たちは、我が家は大丈夫だろうか?と心配で分譲会社や施工会社、管理会社等に照会して、担当者はその対応に追われているそうだ。構造計算書の数値が、
「1.0以上あるからまずはなんとか大丈夫!」「1.6と1.5以上あるから安心」と胸をなでおろした方もいるだろう。
しかし、1.0以上や1.5前後で、安心という訳ではないのだ!
現在の建築基準法の
耐震基準は、ご存知の方も多いだろうが、1979年(昭和54年)の
宮城県沖地震で多数の家屋が倒壊したことを教訓に、1981年(昭和56年)にそれまでの基準から大幅に
改正したものである。いわば25年も前の耐震基準がいまだに基準となっているのだ。
また建築基準法は、第一条で国民の生命・財産を保護するために守るべき
最低の基準を設けたものであると規定されている。建築基準法を満たしていても、それは最低の水準を確保したに過ぎない。
また1981年以前の住宅は、現行の基準以前に建築されているため、当然耐震強度は古い基準のままで、1.0に満たないものがほとんどだ。このような
既存不適格の住宅が日本全国にある住宅の
約1/4に相当する数もあるのだ。
では現行の耐震強度の1.0とはどれぐらいの地震にまで耐えられるのだろうか?
耐震強度1.0とは地震の揺れの強さを示す単位
ガルでいうと、
約400ガルの揺れに耐える強度である。判り易く
震度で言えば、
震度5強から6弱までに相当する。
耐震強度0.5の住宅は、
400ガル×0.5=
200ガル
姉歯氏が設計した耐震強度0.15の住宅では
400ガル×0.15=
60ガル
までの揺れにしか対応できないのだ。200ガルといえば、
震度4程度で崩壊してしまう強度。これではおちおち住んでいられない。
400ガルの揺れは、
関東大震災の揺れとほぼ同じであり、結構耐えるんだなと思うかもしれないが、実は近年それ以上の規模の地震が
頻繁に起きているのだ。
関東大震災・・・・・・約400ガル
(耐震強度=1.0相当)
阪神・淡路大震災・・・約800ガル
(耐震強度=2.0相当)
新潟県中越地震・・・約1700ガル
(耐震強度=4.25相当)
耐震強度1.0ごときでは、阪神淡路クラスが襲ってきたら大なり小なりの被害を受けてしまう。ましてや新潟中越地震クラスでは、ほとんどマンションや住宅がひとたまりもない。
ではなぜもっと基準法の耐震強度の基準を上げないのか?
それは国や自治体にとって、
パンドラの箱だからである。
先ほど述べた1.0にも満たない約1/4の住宅。これは日本全国で1000万棟を超える数にも登る。今回姉歯事件で、耐震強度が0.5を下回るマンションなどは、現在住民に強制退去命令を出し、解体している。この場合、国や自治体は
解体費用や再建築住宅の
共用部分等の建築費用の一部を税金から補助しているのだ。既存不適格の住宅の中にも、莫大な数の0.5を下回る住宅があるのは間違いない。
今回不幸にも姉歯やヒューザーの欠陥マンションを購入した人は、こうやって一部国などからの援助が受けられるが、他の築25年以上の住宅が何の援助を受けられないのはおかしいということで、国は慌てて
耐震改修費用に対する一部補助や耐震改修費の
所得控除などを急遽打ち出してきたのだ。
しかしこれらの人々がいっせいに改修し始めたら、国や自治体もパンクしてしまうので、世間への周知はわざと不十分にしているぐらいに乏しく思える。
せめて
最低基準を阪神・淡路クラスの
800ガルぐらいにするべきだが、こうすると更なる既存不適格住宅を増やすことになる。
また日本伝統の
木造軸組工法では、しょせん点と点で接している
ピン構造で、最近は
構造用特殊合板や
構造用金物で補強して地震に強い家ですと謳っているが、2.0を満たすのは並大抵ではない。クリアしているのはほとんど、2×4住宅の一部や工業化住宅の一部に過ぎない。
事実、阪神淡路大震災や中越地震の際、各メーカーのモデルハウスが集まる住宅総合展示場で、大きな被害を受けたのはほとんど在来工法の住宅だ。
うがった見方をすると、最低基準を大きく上げてしまうと、こういった在来工法のメーカー、工務店の家が売れなくなってしまうという危惧があるからかもしれない。
私の住んでいる福井では、和風で
太い柱・梁があって、
瓦屋根の家が良い家の代名詞と言われています。
しかし瓦屋根は鉄板系やスレート系から比べて非常に重く、また上が重いという
重量バランスの悪さから、地震に対して決して良くはありません。
また太い柱や梁を使えば、確かに
剛性は強くなりますが、家全体の
重量もアップするため、受ける地震の揺れは大きくなります。
剛性が強いと言えば、
鉄筋コンクリート造のマンションなどありますが、マンションも一定以上地震に対して、
わざとある部分を壊そうすることがあります。
剛性が強い住宅の場合、耐震強度以上の力が働いた際に
一気に全部壊れてしまうことがあります。
このためわざと一部弱い場所や
階を作っておいて、限界点に達する前
にそこが壊れることで、マンション全体の崩壊を防ぎ、人命を守るという考え方です。
これは決して違法なことではなく、建築基準法で定められている考え方です。
たとえば10階建てのマンションの場合、3階の柱をわざと
座屈(折れ曲げさせる)させたりとか、リビングの外壁の一部を
帳壁(非構造壁)して地震の際、わざと壊れさせるなどの設計が、当初から図られていたりするのだ。設計者やデベロッパーの一部の人間などは知っているが、購入者には聞かれない限り、
まず説明しないことである。おそらく販売している営業担当ですらほとんど知らされていないだろう。
それもそのはず。
震度6の地震が来たとき、他の階の部屋は
軽微な損傷なのに、
自分の部屋は柱が曲がって鉄筋が露出してしまうことがありうる部屋を、好き好んで購入する人はまずいないからだ。
今の住宅で地震に対して、
まず大丈夫という住宅はほんの一握りしかないということ。これを肝に命じて、暮らすしかないのが現状なのだ。
久々に熱く激白しちまったぜ!(笑)

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