夢は目には見えない…。
と、あいかわらず意味深なことを琳くん(4歳)が囁くので。
まんまと、ぼく(30歳)は「なになに!?どしたの?」って釣られてみた。
忍者に追いかけられて…
殺されそうになった…
刀で斬られそうだった…
逃げきった…
こっちの世界に… 戻ってこれた…。
「こっちの世界って、おうちのこと?」
ちがうよ… こっちの世界の、この、街だよ…。
「街!? この、琳くんのおうちじゃなくて?」
うん…。 この、街の、りんくんの。 おうちだよ…。
「けっきょく、うちなのねっ!?」
目が覚めた、ってことだと思うけれど、夢から醒めることを
「こっちの世界へ戻る」とか言ったり、「夢は目で見てるものじゃない」
という認識など、まったくこいつは刺激的なガキだぜッ!
りんボーイ。こんなことも、言っていた。
りんくんは… 夢の中でだけ… りんくんになれる…。
詩人かっ! お前は詩、そのものかっ!( キム/馬野幹 より )
これについては僕の解釈になるけど、夢での映像が俯瞰のカメラワークで
自分の姿を客観的に視たうえで動ける、ていうことでは?
現実世界では、自分で自分を見れないから。。
と思ってたら琳くん、さらに進んじゃって、とうとう
起きている間は、りんくんじゃない… って言い出して
じゃあ、起きている間、いったい誰なの? って聞いたら
起きているあいだは… ザ・ビートルズ…。
ポールになったり、リンゴになったり、ジョンになったり
なぜだかジョージには、あんまりならないけれど。
琳くんの逃避癖がとどまるところを知らない!なにか辛いことあるのか!
でもでも、ぼくが
「ビートルズより、琳くんの方がいいよー。」
とか悲しんでみると、 まんざらでもなさそう。
すぐに…戻るから…だいじょうぶだよ。
って、まるで、どこにも行かないからねって諭すように言う。
☆
こないだの、あいまい企画の打上げで絵本作家のまいそんさんが
僕の似顔絵を描いてくれたのだけれど、家に持って帰って、娘の
瑶ちゃん(2歳)に見せたところ、0.5秒で「ぱぱー!」って
答えました。ばっちり、ばっちり。
瑶ちゃんは、まだ、じょうずにしゃべれなくてかわいい
「よーちゃん、へーちよー(平気よ)」
「だいぼーぶよー(大丈夫よ)」とか。
ハローキティは、「ちちーちゃん」いつも、ちちーちゃんを
持ち歩いて、自分の子供として世話をしている。おむつ替えたり
寝かしつけたり、服を着せたり。 女の子なのでかわいい。
ぜんぜん、男の子とはちがうので、かわいくって
悲しいことしかおこらないのでは、とか思う。
どうにか、まもられてほしい。まもるのは、ぼくじゃないだろう。
誰かに、まもられるのか。ひとりでつよく、生きるのか。
その選択に僕は、無残なまでに関わりがないだろう。
あのこに救世主が現れたみたいに、ヒーローはいつだって
ギリギリにならないと来てくれないけど、信じていよう。
☆
珀くんには、何もない。まだ何もない。
ぷくぷくと、まるくて、かわいいだけの生き物だ。
しかして、いよいよ「左手」を発見した。
子供の「発見」という仕組を教えてくれたのは、れいちゃんだけれど、
赤ちゃんたちは「発見」するまで、自分に手があることすら知らない。
生まれて3ヶ月でようやく「左手」を発見して、珀くんは己の左手を
まじまじと見つめる。 すぐに「右手」を発見し、いずれ「足」だって
発見するだろう。ぼくはもう、自分の手を見て新鮮に驚くことがない。
何かを得るということは、何かを失うことで
1度手にしたものには2度と出会うことができない。
一期一会、か。 珀くんの人生が、もう始まっているのか。

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