暗がりに光をつくりだす
真夜中の少年
「今夜も言葉が降りますように」
朝の番は太陽
夜の番は月
次の番は君
息を吹き込んでふくらますんだ
月曜にのぼった太陽をひとつと数えて
週末の休みには数を忘れて君に手紙をかく
「今朝のおはようと今夜のおやすみを君へ贈る」
そして
忘れず君のために祈るよ
止まない工場
カルガモが列をみださず歩く
はみだしてはぐれるから
オカンムリがきて鍵をかける
だから
今夜も光をつくりだす
光の数だけコイン
2枚でパンひとつ帰り道
「コイン3枚であの子に届けてよ」
声を忘れた明け方のポストマン
その瞳が言葉さ
パンくずにつづく bird
猫が盛りづく road
口ずさむ word
どうか今夜も言葉が降りますように
ねぇ
まぶしい僕の女神の君よ
真昼間のお話を聴かせておくれ
君へ手紙が届くころ
僕は
君の
夢を
みる
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黒いラインの流れ
ささやき唄うビート詩人
虹の女神とモノクロ写真の穴
色のない絵の具をにじませては 埋める
思い出さない夜はなかった
休みなく走らせて
疲れても また同じ
思い出さない夜はなかった
祈りは紙とペン
残さず 記されて
全て 彼に 託した
沈黙へ 感謝を捧げる
叶うことのない幻でも
ぼくにはそれしか
一字も一音も届かなくても
ぼくにはこれしか
なかった
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ポストマンの知る限り
少年は 遠くから来た
ポストマンの知る限り
少年は 逃げ場がない
ポストマンの知る限り
少年は いつも泣いて
ポストマンの知る限り
少年は 毎日 手紙を
ポストマンの知る限り
少年は
毎日。
少年は 恋をしている
ポストマンの知る限り
少年は 夢をみている
ポストマンの知る限り
少年は
ポストマンの知る限り
少年は 光を創りだす
音も無く 雨を降らす
少年は
少年は 悪い人間では
ないはず
ポストマンの知る限り
少年は 毎日 働いて
ポストマンの知る限り
少年は ひとりぼっち
★
太陽のもとには 出ていけない
僕は 夜に出かけて ネオンを灯す
君は何時 眠るのだろう
ぼくのイルミネーション
太陽の光には
かなうはずもないけれど
どうか今夜も
言葉が降りますように
☆ミ
少年の
差し出す封筒には
いつも
決まって宛て先が
書かれて いない
ポストマンは
何も語らず
ただ手紙を受け取る
少年が
工場へ出かける
夕暮れ
ポストマンは
何も語らず 見送り
明け方
ポストマンは
何も語らず 待つ
そして
ただ手紙を受け取る
ただ手紙を受け取る
何も語らずに
雲を突き抜ける 鳥
木々が色づく 通り
目に見えない文字
−あの子との
ほんのわずかな出来事は
少年にとって
かけがえのない
大切な宝物です
でも その
時間の あまりの
刹那さに
少年は
涙するのでした。
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とおいまちで
ちいさな
おとこのこが
いいました
「よるは
あめがふってる」
どうして?
「くらいだろ」
トーマスもパーシーも
線路も地図も 寝てる
誰もが眠る真夜中は
静かに雨が降っています
暗がりに灯る ひかり
少年の コトバが
朝の女神に 届きますように
ぼくのオヤスミを
きみのオハヨウにかえて
おくるよ
「グッナイ」
inspire from「真夜中の少年」original text by 加久裕子

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