冨田勲さんが1974年に発表したムーグ・シンセサイザーを楽器として使い制作した、ドビュッシー作品集『月の光』という作品は、日本のレコード会社の原盤制作ではありませんでした。冨田さん(あるいはその関係プロデューサー)が自主原盤を直接アメリカのRCAレーベルに売り込み、採用されて、まずはアメリカで発売、ヒットし、その話題性とともに日本のレコード会社(当時のビクター・レコードRCA事業部)が発売し、日本でも売れたのです。
原盤制作にあたって、日本のレコード会社が制作費を負担し、全原盤としてこれまで何千枚のLPやCDが発売されてきたでしょう。そしてそのうち世界に認められるような作品が何枚あるのでしょう。ひょっとすると坂本九さんの「上を向いて歩こう」(1963年)にまで遡ってしまうのではないでしょうか。
プロデューサーとしての視点からすると、日本原盤のアルバムで、外国アーティストを起用して制作されたものがまったくといっていいくらい売れていないのはなぜか、ということになります。
答えはアーティスト側に「売ってオカネにする」というインセンティヴがないからです。
まれには日本のレコード会社が(著名)アーティスト側に日本市場以外の、海外の発売権を無償譲渡して、原盤制作するというケース(日本公演ライブ録音など)もありますが、どういうわけか、たぶん企画内容が、海外市場向きでないからでしょうが、成功にはいたっていません。
これから日本人プロデューサーが世界に飛躍する時代が来るとしたら、つまり日本のレコード会社が世界で商売できるような作品を供給できるようになるとすれば、そのキーポイントは、アーティスト側に売るインセンティブ(アーティスト印税、出版印税)を与えるということです。
この文章を読んでも、理解できる業界人がどのくらいの割合で存在するかは、おおいに疑問ですし、ましてや仕事関係にないヒトが理解することはむずかしいでしょうが、確実に、日本の音楽ビジネスの変革、イノヴェーションが必要なのことに気づくべき時がきています。

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