最も音楽プロデュサーとしての成功したヒトは誰でしょう。まずクライブ・ディヴィス以外のヒトは、思いつきません。
クライヴ・デイヴィスは1934年ニューヨーク・シティ、ブルックリンのユダヤ系の家庭に生まれました。ハーバード大学ロー・スクールを卒業後、1960年に弁護士としてCBSレコード傘下のコロンビア・レコードに入社。それ以降彼の名とともにかたられるアーティストにはボブ・ディラン、ジャニス・ジョップリン、サンタナ、バリー・マニロウ、グレイトフル・デッド、ホイットニー・ヒューストンら大物の名前が浮かんできます。現在は、BMGエンターテイメントとのタイアップによるJ レコードの会長兼、最高経営責任者として活躍中です。母校、ニューヨーク大学に500万ドルを寄付し、レコード業界の人材を養成する学科、クライヴ・デイヴィス・レコード音楽学科の設立に寄与しています。
彼の最近の仕事としては、ロッド・スチュワートの"The Great American Songbook"があります。手元にある第3集ではエリック・クラプトン、スティーヴィ・ワンダーが演奏で、ベット・ミドラー、ドリー・パートンがデュエットで参加しています。「歌」の力を格別のものとして信じている彼の真骨頂というべきヒット企画であることは間違いないところでしょう。
同じ音楽でも演奏ものと違って、歌ものは「声」や「詞」はそれが聞く方の耳に入ってきたときに、その内容にいやおうなく関与せざるを得ない、ヒトをインヴォルヴ(巻き込む)する力を持っています。”歌は世につれ、世は歌につれ”とか昔から言われているように、その時代の風潮を語る際の音楽も、今週のベスト・テンもやはり「歌」です。
一方演奏ものはより音楽の本質を浮かび上がらせてくれます。メロディー、リズムそしてハーモニーというものの素晴らしさ、つまり楽曲そのものの素晴らしさ、音楽性といわれるものはすべて楽曲の演奏によって充分に体現されています。”印象に残るメロディー”という場合に浮かぶのはえてしてインストルメンタルだったりします。
これまた手元にあるMusic&Mediaという業界向けチャート誌を見て思うのは、最近のヒット曲は、”歌と演奏のバランス”が肝ということです。単純に3割くらいメロディーを印象づける演奏部分があって、7割を占める歌も、2声のハーモニーで聴こえてくるスタイルがヒット・パターンのように思われます。
音楽ビジネスを本格的に学びたいという方はニューヨーク大学に行くこともひとつの選択肢として上げられる時代になりました。

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