登録販売者という資格をご存知ですか? 薬事法改正により2009年から施行された資格です。この資格があると柔道整復・鍼灸師でも薬店を開設し、第2類・第3類の漢方薬を販売することも可能です。すでに薬店を鍼灸院に併設して営業時間を分けて一人で行っている鍼灸師もいます。毎年、9〜10月ごろに各都道府県で試験が行われます。合格率は40%ぐらいですが、さほど難しい試験ではありません。試験には1年間の実務経験は必要であり、これが西友などで不正に証明書を出したということがニュースになったりしました。鍼灸柔整業界も関連した大問題を引き起こしております。実務経験は、1年間以上、月80時間を薬店・ドラックストアーなどで勤務しなければならず、受験申請の際には実務経験証明書と共にタイムカードなど労働関係書類などの提出が義務つけられています。実務経験は配置販売業(いわゆる富山の薬売り)の従事者でも認められており、資格取得を開業柔道整復師に医薬品登録販売者資格取得システムとして売り込み大もうけしている会社(一般社団)があります。方法は、配置販売会社の従事者として開業柔道整復師などが登録し、薬箱を患者さんや親戚に預け、月80時間を1年間、配置販売したという勤務実績を作り、1年後に実務経験証明書を出すということです。巧妙なのは、実務経験は一般社団に委託した形で、別会社で教材の販売をしていて、教材を開業柔整師に40万円で販売し、そこで利益を得ることです。その会社のホームページでは、すでに1500人の柔道整復師が資格を取ったと記載があるので単純に計算しても6億円ぐらいの儲けです(税金は・・・)。配置薬販売業の場合、店舗販売と違い、従事者が一人で訪問しても実務時間として換算されるので、正確な実態がつかめません。早い話、ごまかしてもわからないのです。配置販売をしている開業柔整師もすこし後ろめたいこともあるのか、誰もこのことを問題にはしません。法律の抜け穴を使った商法ともいえます。本業の合間に薬箱をたった10〜20個のために月80時間以上、平均して1年間以上訪問するはずもなく、多くは勤務時間てんこ盛り日報となります。この会社に厚生労働省の調査が入らないのがとっても不思議なのですが、実は柔道整復師と登録販売者資格については、過去に次の事件がありました。最初にこの商法を発案したのは、富山にある配置販売会社O商店であり、2009年ごろ、大阪のある鍼灸柔整団体と連携して登録販売者資格を300名ぐらい取らせました。ところが一部の会員から実務経験の不正が発覚し、厚生労働省が調査に乗り出しました。その結果、数十名が実務経験の不備ということが判明し、資格合格取り消しの目にあったのです。それからしばらくして、毎日新聞が朝刊一面トップに、この登録販売者実務経験不正について記事にしました。その内容が、一部事実と違うことがあり、今度は鍼灸柔整団体が毎日新聞を提訴し、結局、和解(実質的には鍼灸柔整団体が勝った)となりました。事件後、配置販売会社O商店は手を引いたのですが別の会社が大々的に宣伝し、1500人の開業柔整師などが配置販売従事者になったという状況です。
現在の登録販売者の資格試験は、そのフィルターが撤廃されて、全く医薬品の販売の経験のない人でも受験することができるようになりました。なぜこれらが廃止になったのかというと、制度スタート直後に発覚した、柔道整復師等の『実務経験証明書』の不正が要因といわれています。登録販売者の資格を持っていると、資格取得後でも実務経験の要件を満たせば『店舗管理者』として第二・三類の医薬品を単独で取り扱うことができるようになります。2016年以降の受験者の場合は、直近5年前以内に2年以上の実務経験がある場合は、管理者要件を満たしているので、合格後に医薬品販売に従事したり、店舗の管理者になることが可能です。
登録販売者資格と接骨院の事業についてしっかり議論する必要があります。開業柔道整復師が登録販売者の試験に合格しても実務経験2年積まなければ管理者として開業できません。一方で施術所と薬店を分ければ、薬を患者さんに合法的に出すことができ、治療の幅が広がります。とくに鍼灸整骨院の場合、漢方薬を出すことができるメリットは非常に大きい。ある意味、これは柔道整復師や鍼灸師にとって新しい治療スタイルが生まれるチャンスかもしれません。問題は、実務経験をどうクリアーするかです。
そこで提案なのですが、登録販売者の資格は、学生のうちに取得させる。柔整鍼灸学校が学校付近に50坪程度の漢方薬店を開設し、学校に通う生徒は3年間のうちの2年間を登録販売者の実務経験にあててはどうでしょうか。平日の1日4時間を併設薬店で実務に無償で従事して卒業までに実務経験を満たす。実務経験は平日の1日4時間を月曜日から金曜日まで(月20日以上)で月80時間になります。鍼灸師や柔整師の学校は、午前、午後、夜間などの半日授業が多く、生徒は自習も兼ねて学校近くの薬店に通うことは難しくないと思います。この実務経験は労働基準法には該当しないので学生に賃金を支払う必要はありません。学校で薬店を設立し、運営を別会社に委託する方法がもっとも適していると考えます。ただし、実務経験は法律にグレーな部分があるため、1店舗に多数の従事者が認められるかは法律家を交えて厚生労働省と協議する必要があります。

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