平成28年12月9日の社会保障審議会介護保険部会では、次のように述べられています。「高齢者、障害者等の福祉サービスについて見ると、デイサービスなど相互に相当するサービスがある。利用者の利便や、サービスの提供に当たる人材の確保などの課題を踏まえると、同一の事業所で介護保険と障害福祉の両方のサービスを一体的に提供できるようにすることが考えられるが、現行制度上、障害福祉サービス事業所としての指定を受けているというだけでは、介護保険サービスを提供できる仕組みとはなっていない。 また、介護保険優先原則の下では、障害者が高齢になり介護保険の被保険者となった場合、その障害者がそれまで利用してきた障害福祉サービス事業所が、介護保険サービス事業所としての指定を併せて受けていなければ、その障害者は、それまでとは別の介護保険サービス事業所を利用しなければならない場合がある。このような状況を踏まえ、サービスの質を確保しつつ、介護保険サービスの一類型として新たに共生型サービスを位置付け、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所の指定を受けやすくするための見直しを行うことが適当である。その際、具体的な指定基準等の在り方については、平成30年度介護報酬改定にあわせて検討することとするほか、事業所の指定手続についても、可能な限り簡素化を図ることが適当である」。
平成30年の介護保険改正では「共生型サービス」が創設されます。いわゆる「富山型デイサービス」が法制化されるのです。これによって、介護保険の指定通所介護事業所を母体として、障害者総合支援の就労継続支援B型の事業を実施することや、高齢者のデイサービスに障害者や児童デイサービスも併設することが可能となります。
介護保険制度には、「基準該当障害福祉サービス」があり、市町村が「必要であると認めるとき」に支給できました。しかしいままで都市部では、指定サービスが十分にあるという理由から、「基準該当障害福祉サービス」を認めていませんでした。平成30年度以降は、指定されれば全国どこでも共生型デイサービス開設できるようになるのです。障害福祉サービスには自立訓練(機能訓練・生活訓練)、生活介護、放課後等デイサービスなどがあります。とくに「自立訓練」の「機能訓練」や「生活訓練」は、柔道整復師の専門性が発揮できる分野であると私は考えています。
「自立訓練」とは、身体障害者や難病患者などに対し、理学療法や作業療法などのリハビリテーション、生活などに関する相談・助言などを行う事業所です。利用期間は原則として1年6か月です。脳梗塞の場合、片麻痺のリハビリテーションは、「機能訓練」で行い、高次脳機能障害は「生活訓練」が担当します。共に併設している福祉施設が多く、病院退院後、1年6か月の間、自立訓練を利用することができます。その後は、職場復帰したり、生活介護や就労継続支援B型などの事業所に通います。「機能訓練」は介護保険の老人保健施設のような在宅復帰のための中間リハビリテーションサービスという位置づけです。ところが、実際は平成28年12月現在、自立訓練の「機能訓練」事業所は、全国に171事業所数(国保連実績、ほとんどが社会福祉法人)しかなく、利用者数はわずか2,204名です。65歳以下の身体障害者の数は全国に約120万人もいるので、利用率で換算するとたった約2%です。しかも、その多くが、「ダルク」といわれる薬物依存症からの回復事業所なのです。「機能訓練」は制度と実情のミスマッチと言えるでしょう。もっと魅力がある「機能訓練」事業所が求められています。「生活訓練」事業所は、知的障害者の利用が多く、1,177事業所、約12,000人が利用しています。放課後等デイサービスは、全国に9,726事業所(平成28年12月国保連実績)、146,202人も利用しています。こんなに障害児がいるのだ!と、単純に驚きます。中にはテレビを見させるだけで何もしない悪質な放課後デイサービスも数多くあります。近年、爆発的に放課後等デイサービスが増えたため厚生労働省は慌てて、規制を強化しました。問題なのは1万カ所近くもある放課後等デイサービスの大多数が知的障害児を対象としており、本当に必要な、重度心身障害児のための児童発達支援事業所や放課後等デイサービスがほとんどありません。重度心身障害児を対象とした事業所は専門的で設備や手間がかかるため開業が躊躇されます。でも、これこそが柔道整復師が本来目指す分野なのでしょう。柔道整復師が重度心身障害児の麻痺した四肢にマッサージや機能訓練を施術すれば、どんなに救われるでしょう。柔道整復師が難病の身体障害者に機能訓練や施術をすれば、どんなに喜ばれるでしょう。障害福祉サービスの分野で柔道整復師が活躍できる場がたくさんあると思います。ただし、柔道整復師が単独で障害福祉サービスの分野に飛び込むには、少々ハードルが高いといえます。そこで追い風になるのが「共生型デイサービス」の創設です。国は、平成30年度の介護保険改正で「共生型地域社会の深化」を掲げ、共生型サービス分野の人員基準等を緩和すると思われます。そこで機能訓練に特化した短時間型「共生型デイサービス」を開業するのです。つまり高齢者だけでなく、機能訓練に特化した自立訓練、放課後等デイサービス、児童発達支援事業所を併設したデイサービスにするのです。
共生型デイサービス創設は、柔道整復師が障害福祉サービスに参入できる大きなチャンスが来たと言えるでしょう。

0