日本の少子高齢化は急速に進んでおります。平成21年の18歳人口は、121万に減少し、昭和41年ごろのピークと比較すると実に約6割に過ぎないと報告されています。さらに規制緩和により新設大学も非常に増え、高卒者の大学短大進学率は、6割にも達します。その相乗作用によって、多くの専門学校は生徒が集まらず、定員割れを来たしているのが現状です。 医療系の国家資格には、栄養士、薬剤師 、看護師、 保健師、助産師 、救急救命士、 診療放射線技師、 臨床検査技師、 臨床工学技士、 歯科衛生士、歯科技工士、 理学 療法士、作業療法士、 義肢装具士 、 言語聴覚士、柔道整復師、鍼灸師などがあります。なかには資格を得ても就労が難しい職種がいくつかあります。その代表格として鍼灸師と歯科技工士が挙げられます。この二つの資格から見えてくる柔道整復師の将来についてお話します。歯科に携わる職種には歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士などがあり、国民の歯科医療に貢献しています。歯科技工士とは、歯科医師が作成した指示書を元に義歯(入れ歯)や補綴物(差し歯・銀歯)などの製作・加工を行う医療系技術専門職のこといいます。 昨今の歯科医療の向上と医業の分業化に伴い、非常に高度な精密技工技術と審美感覚が求められています。 歯科技工士の養成機関等の状況は、入学者数は平成11年のピークが時には約2800人でしたが平成18年には約1600人となり、率にして45%も減少しました。歯科技工士学校は、全国に72校ありましたが、この10年に10校が閉鎖になりました。20年度の入学率は62%しかなく、半数が定員割れをしています。なぜ、このように衰退してしまったのでしょうか? 平成18年の全国の就業歯科技工士は約35,000人です。年齢階層別に見ると、20代、30代の若者が少ないことが特徴です。技工士は、20年前ぐらいは病院、歯科診療所の勤務の方が多かったのですが、現在は約7割が、1〜2人の小規模歯科技工所の勤務となっています。就労時間は、自営者は週70〜80時間の長時間労働との報告がされています。つまり週6日は、10時間以上働いているということです。深刻なのが若者の離職率であり、25歳未満では、免許取得者の8割近くが就労していません。3年間専門学校に通い、国家試験を合格しても10人のうち7人は3年以内に歯科技工士を諦め、他の職についています。技工士学校の1学年80名のうち、数年後に技工士として就労しているのはせいぜい10名程度であるとの報告もあります。若い歯科技工士が辞めていく背景には、技工料の低さにあります。小規模技工所の平均売り上げは、年間約940万円しかなく、そこから材料費、配送費、営業費、家賃などを支払うと、週60時間以上働いて、月平均25万円ぐらいの収入しかならないとのことです。また、歯科医院の経営が苦しいせいか「支払いを待ってくれ」「合わなかったからタダでやり直せ」「技工料下げろ」などの歯科医師の要求が多く、これも若者の離職率を高める原因になっています。このままでは、近い将来、歯科技工士がいなくなって歯科医療が成り立たなくなることもあるといわれています。
平成10年の福岡裁判で厚生労働省が敗訴してから、27校であった健常者の為の鍼灸学校は、僅か10年で90校まで激増し、今では毎年約6,000人の鍼灸師が誕生しています。しかしながら鍼灸学校のほとんどが定員割れをして、数校が廃校になっています。平成29年度末で就業鍼灸師は約10万人です。この十数年で鍼灸専科の卒業者は激増し、その多くは就労困難となっております。その理由は、平成10年以降の新設された鍼灸学校は、全て、あん摩マッサージ指圧学科が併設されていないからです。鍼灸師業界には、あはき法第19条問題というものがあり、「厚生労働大臣、文部科学大臣は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難となる恐れがある場合は、あん摩マッサージ指圧師の養成施設を許可しないことができる」とあり、この条項ができた昭和39年以後、1校も新設、定員増が認められていないのです。あん摩マッサージ指圧師の資格は、マッサージ治療院、訪問マッサージ(出張施術)、介護保険の機能訓練指導員、病院の運動器機能訓練などの就労場所がありますが、鍼灸専科では、これらのから除外されているため、働く場所がとても少ないのが現状です。しかも鍼灸学校は実技の臨床実習が少ないため、学校を出ても現場で鍼灸師として役に立ちません。若者は鍼灸師に夢を抱き、高い授業料を払い、鍼灸学校に入学います、そのうち卒業後にマッサージしか就労がないことや、鍼灸院開業が困難である現実を知ることになります。
平成29年度の登録柔道整復師は約6万4千人、いずれ柔整師10万人時代がやってき。競争は激しさを増し、賑わっている商店街に接骨院や無資格マッサージ店、整体院がひしめきあっています。 医師の指示や同意が無くても医療保険が使える医療系国家資格では柔道整復師しかありません。このことが一時期、柔道整復師業界の繁栄を生みました。だが、柔道整復師法は法的基盤が脆弱であり、組織的に活動しないとあっという間に衰退します。昔からダメだ、何とかしなければといわれ続けた職種が柔道整復師です。この業界の不思議な事は、同じような問題を何十年以上前から言われながら、ほとんど改革も無く今に至っている割には、結果的に何とかなっていることです。しかし、時代の変遷と共に柔道整復師の役割も大きく変化しなくてはならない時期に来ています。いつまでも療養費だけでは、歯科技工士や鍼灸師のように衰退していくことは明白です。これからは介護保険、総合事業、障害福祉サービス、美容、スポーツなど様々な分野を開拓していかなければ将来がないのです。息子を継がせる親として切実に考えています。

0