全くハンディがないと言ったら嘘ですが、コンボでジャズを演奏するのは全盲の私でも可能です。私、特に音感が良い訳でもなく、楽器もそれほど上手じゃないんですが、月に一度はライブハウスに出演しています。こんな私を引っ張り出してつきあってくれているのは、ベテランギタリストの親分と実力派のお嬢さん達です。
ジャズという音楽は一から十まで譜面とにらめっこしてやるわけじゃなく、メロディとコード進行を知っていれば初対面でも一緒に演奏できるのです。このグループは2年余り続いているのでレパートリーとしている曲はみんながしかけを憶えています。でもスタンダードならリクエストがあればどんどんやります。私としては、ちょっと譜面をカンニングできないところが泣きです。それとお互い顔を見合わせて目で合図してきめるのが判らないので、音やその場の雰囲気を注意しています。
私以外は皆健常者ですし、皆プロミュージシャンです。でも音楽が始まってしまえばプロもアマもないし、ましてや障害者であるかなんて全く関係ありません。そうそうこのグループには年齢も男女の差もないんです。
この文章は2004年に障害者支援センターの通信に発表したものです。難しい福祉関係の会議でしか会わない人たちの間に、自分がサックス吹きだとカミングアウトしたということです。

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