朝から生憎の大雨、柴又でクラス会があった。
JRで新宿、日暮里、京成で高砂で乗り換え、ようやく柴又に辿り着く、2時間の旅は同じ都内でも、西の端から東の端に位置するのか非常に遠い所にある。柴又帝釈天に繋がる、柴又駅からの帝釈天参道は僅かな道のりであるが、虎さんに代表せれる気取らず、慣れ親しい、下町文化がぎっちり濃縮されている。
◇昭和の時代のレトロな雰囲気
そんな街中におもちゃ博物館が昭和の時代のレトロな雰囲気で出迎えてくれる。
ユーモラスなロボット人形の自動販売機が店先に立ち、人招きしている。おもちゃ以外も店先のキンチョールとかアース渦巻きの広告看板が30数年前の歴史を伝えている。
既に立ち消えてしまった「駄菓子屋」「オモチャ屋」「射的」「プロマイド」と、個人で蒐集されたコレクションが満載され、古き良き時代に育ったオジサン、オバサン達のふるさと回帰をここで演出するものであろう。
目まぐるしく変化の激しい時代に逆らうようであるが、こうした立ち戻りの文化に何か見失った物を見るようで、実に新鮮で楽しく、心揺さぶられる。
◇「かつしか語り隊」

ごったがえす人ごみに「かつしか語り隊」と背番号を背負ったジャンパーのおじさんが街中に立ち、彼等の経験から生まれた蘊蓄を背景に沢山披露頂き、道案内してくれる。
帝釈天を中心に「虎さん記念館」、「山本邸」など下町文化の一遍を知りたければ、柴又へ来いとでも、言うのか街ぐるみ、町おこしの取組が見える。
傍から、観光バスのおねえ様ガイドの旗に引率された、群れ集が観光バスから吐き出され、大量にやってきた。
折からの、激しい雨もなんのその、此処では関係なく、賑やかであった。
◇虎さんとの出会い
小さな柴又駅に、吐き出される客は殆どが帝釈天へ、中には黒のスーツ姿もここでの法事がおこなわれるようである。柴又駅前は既に帝釈天に通じる、道に繋がっており、駅前に虎さんの銅像が出迎えてくれる。その銅像前に背広に帽子、大きなカバンを下げた虎さんが何処からか現れ、たちまち観光客に囲まれ、愛嬌をふりまき、写真撮りに特段のサービスを行っている。
観光案内に大事な一役をかっており、3、4人で交替で担っている。
◇香ばしい匂いのアーケード街

アーケード街に入ると、プーンと香ばしい醤油の匂いが、胃袋を刺激する。老舗の看板の団子屋類が軒を並べ、参拝客を呼び声の声で手招きしている。雨音も激しく、降る雨も激しいのにも関わらず、切れ目ない参拝客の渦で、賑やかである。
此処ではもう気取りもない、伝統の江戸っ子下町文化の真っ只中である。
◇帝釈天
帝釈天に上がり、お参り。池と手入れの行き届いた広い庭園を網の目のように繋がる回廊から雨の降る風情は新緑が一段と輝き、見事であった。圧巻は式の草花と鳥や物語風の見事な彫刻が堂の外壁を覆い、その規模、繊細な仕上がりは、これまで見た彫刻でも一、二を争うぐらいの素晴らしいものであった。
「屋切の渡し」など江戸川の風情も見たかったが、滴る雨に既に全身つぶぬれ、靴も水中に没する激しい雨に、ここで断念し、川魚料理で有名な「川甚」で宴会を行い、旧懇を温めた。
天気のよい日に改めて、虎さん風情に心酔したい下町の一角であった。

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