
「男度胸に命を掛けて、このロープに総てを託し、高所への挑戦だ〜」
典型的なメタボリック症候群の見本の様な太めの腹に太めのベルトを締める。このベルトに装着したロープがあり、先端にフック金具が付いている。
腰に道具入れを下げ、ロープを垂らしながらの姿はまるで化粧回しが緩んだ相撲取りのようで、余りみっともない。
地上15m高所のマストによじ登り、ロープはマストの外周部を一回りして、フック金具をこのベルトに装着した金具に「バチッ」とはめるのである。
これで一応はこのロープに体が支えられ、命を預け、その名の如く、安全帯の機能を発揮する。
「命預けま〜す♪♪・・・♪」なんて言ってられない、危険な作業であるが、マストが損壊しない限り、きちんとフック掛けしておけば先ずは墜落は無いと信じたい。
夏場に掛けてのお受験対策に、記憶力、判断力をあわせ思考能力を問われ、ひたすらオツムの訓練に明け暮れた。
その難問鬼門を通過し、ハムの上級資格を受領し、ホットして束の間の喜びに甘受してまもなく今度は命かけての体力勝負である。
総務大臣から頂いた、有り難い頂き物の資格を背景に新たなバンドのアンテナを構築し、ようやっと電波環境のインフラが整備される。
2インチのマストに割り箸程度の頼り無い足場を腰に重い物をぶら下げ、73キロ余りの体重をかけてよじ登り、長時間とまり木に縋りつく、のは結構ヘビイな作業である。
高所から降りて、2、3日は普段使わない筋肉にストレスがかかり、腕や足首はしびれる。
それも、これも頭脳、体力、度胸を張って、 空にかける無線老人のロマンの世界なのかもしれない。
マストの作業は終わったら、タワーの基礎となる枕木も痛み、補修用のペンキ塗り、次いで屋根瓦の補修と連続してしまった。
この間、北風の烈風が吹きはじめたので、高所の区切り付け、暫くは登ることもあるまい。
家族もこの間、無謀な振る舞いに最早、諦め、冷やかに、距離をおいて見ている。

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