
組織から、送り出され自由の身になったが、出身母体の工場、移動した事業部、それに関連会社と会社の事情とも併せ色々転籍したので、この手の懇親パーテイの誘いが幾つか、声がかかる。
それぞれの場所で辛酸をなめながら、小僧っ子から、親方日の丸のもと、ごく当り前の企業人として可もなく不可も、ン十年と言う歳月を歩んできた。
その間の生い立ちから、辛酸を舐めた仲間とか、組織として関わりあった人とお会いして、元気さを確かめ会い、懐かしくご挨拶出来る場所なのかもしれない。
品川のプリンスホテルの23階で晴れやかなパーテイが開かれた。
ホスト役となった現役組役員とゴマ塩族と併せ約200名の大宴会であった。
ところが予定した役員が遅れ、宴会場の前の狭いエレベータホールに押し込められ、何と30分近く待機した。もう、大半は塩枯れた老人集団ではあったが、人間単位の発熱量が重なると、逃げ場を失った熱となって蓄積し、物凄い高温のサウナになってしまった。
2階のクロークにコートは預けたものの、背広一つで、この冬場に額から思わず汗が目一杯汗吹き出し、我慢も限界であった。じらし、汗をかき、乾杯の席に、喉腰の美味さを倍加させる演出とは思えないが、この密室の燻製モードに、出端をくじかれた。
宴会場が開かれ、はじける様に陣取り合戦。この群れ集の中、色々な出身母体の集まりだけに、馴染みの顔触れがテーブル単位でそれぞれ島が出来上がる。
不本意な出来事も背負いながら、何とか事業が廻っていると言う、社長の挨拶もそこそこに、宴が始まる。
テーブル周辺にはそれぞれ、美人のお嬢様達が配置され、彼女らの手厚い持てなしのサービスを甘受しながら、煽る様にアルコールを一気に流し込む。
多少のアルコールに酔いも廻れば、その群れの中から、馴染みを追いながらの島巡りが、あちこちで始まる。
でも、輩は、隣席の友人と、どうでも良い世間話を肴に、壁際に置かれる料理に往復し、テーブル席に持ち寄り意地汚く、腹に納め、頑に島を護ってしまう。
群れの中に渡り歩き、型どおりの挨拶がどれ程の響きを持つのか、心通う物かを考えてしまうと、つい面倒になってしまう。
大勢の群れの中から、現役時代から、黒髪豊かに以前と変わっていない顔、見事なまでに頭上が輝いている者、それぞれの道を究めた男達の姿に、懐かしさと歳月の経過が色々重なりあってくる。
そうこうしていると、瞬く間に閉会のご挨拶、結局渦に呑まれたままの儀礼的な集会に終わってしまった。

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