昨年PW40
90エンジンでたて続けに起こった「硫化腐食による高圧タービン翼の破断」は、翼内部に生じた腐食生成物が冷却用の小さな穴をふさぎ、翼が(1000℃以上に)過熱したため、遠心力に耐えられなくなって破断したらしい。
遠心力によって高圧タービン翼にかかる力は、翼を長手方向に伸ばす方向に働く。翼一枚に加わるその力は
約15トン(=バス2台分だそうな)。これらは、たまたまTVのNHKスペシャル(再放送「テクノ・クライシス」)で放映されていた。
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まあそんなものかな?
例によって、チェックしよう。。
タービンディスクの直径と翼の断面積を適当に仮定し
回転数はIHIの資料を使って検証してみた
確かに15トンくらいの力にはなりそう・・しかし仮定した翼の断面積で除した
「応力(1mm2当たりの力) =
171 N/mm2 」 は・・大きすぎるかも?
「金属の強度と温度との関係」
市販されているニッケル超合金の1000℃に於ける設計強度、即ち
許容応力は、図から「安全率=4の条件で」 5〜10 N/mm2
安全率=4を航空機のように限界(詳細)設計する場合有効な1.5
に落とし、数値を(4/1.5)倍したところで、〜26 N/mm2
く らいが上限。 〜26 N/mm2 << 171 N/mm2
上図は「クリープ現象」を考慮して定められた米国の設計基準値で、特に保守的な数値ではない。ふつう、鉄・ニッケル系金属は
800℃以上になるとオレンジ色に輝き、その強度は常温時のに比べると、まるで羊羹のように低下する。
そして常温に戻るたび、外観は青灰色のビスケット状肌に変わってゆく。
「クリープ現象」は、金属が500℃以上で保持されると、結晶粒界の損傷(空孔)が時間とともに増加してゆく性質。数時間〜数万時間と保持し続けると、通常の引張度より弱い力で徐々に伸び続け、破断に至る現象。
ところで、上図は「この応力までなら無限回繰り返しても良い」という「疲労限」の値。繰り返し回数を数千〜数万回まで・と限定すると、設計強度は上記の数十倍まで許される → =
171 N/mm2はあり得る。。。ホッ (SN線図は省略)
こういった、特殊な耐熱合金の「高温クリープデータ」と「疲労試験データ」は、通常・開発メーカのノウハウだとして開示されることはない。