ドーピング違反としてJリーグから制裁を課されていた問題について、我那覇和樹(川崎フロンターレ)がCAS(スポーツ仲裁裁判所)から勝訴判決を受けた。
そしてJリーグ側はCASの決定に従い、我那覇に謝罪する意志を示した。
まず、事実関連を時系列ごとに補足説明を交えて整理してみる。
●2007年からJリーグは、ドーピングに関する項目についてWADA(世界反ドーピング機関)に準拠すると決定。
(これはオリンピックの競技の中で、サッカーだけがドーピングの基準がWADAからかけ離れていて、現状のままではサッカーは五輪の正式種目として認められない可能性を考慮してのもの)
●2007年5月、高熱などの体調不良に悩まされた我那覇は、当時チームドクターだった後藤秀隆の判断で
ニンニク抽出成分及びビタミンを点滴投与した上で試合に出場し、注射の事実を試合後にJリーグに報告した。
(ニンニク抽出成分・ビタミンはJリーグの規定でもWADAの規定でもドーピング禁止薬物には当たらない)
●点滴を許可無く行った事がJリーグのドーピングの規定に違反しているとして、Jリーグは我那覇に6試合の出場停止処分、フロンターレに1000万円の制裁金を課した。
(Jリーグの規定では、点滴を行う際には、正当な医療行為として認められる場合を除き、事前の許可を義務付けている)
●クラブから非人間的な扱いを受ける等、信頼関係の消失が理由で、後藤はフロンターレのチームドクターを退職。
●Jリーグのドーピング判定に不服を感じていた我那覇は、日本スポーツ仲裁機構に判断を求める意向を示したが、Jリーグ側が「仲裁申請はCAS以外は認めない」と表明し、我那覇はCASに提訴。
●CASで仲裁を進めると通訳への報酬等で裁判費用が高額になり、我那覇個人では賄い切れなくなる為、
我那覇の裁判費用を支援する基金が発足した。
CASでの仲裁について、主なポイントはこの2点。
◇ニンニク抽出成分・ビタミンの点滴行為は、今回の我那覇の件の場合は、WADAの観点では正当な医療行為に充たるのか?
◇WADAの観点では、点滴の行為自体はドーピングをしている事になるのか?
選手に医療行為を施す場合、一般常識としてJリーグへの事前の許可は必要無い。
例えば脚を削られて選手が血を流している場合、許可を貰わないと治療出来なければ、その許可を貰いに走り回っている内にその選手が出血多量で死にかねない。
だから医療行為を行ったら、事後報告すればいい。
つまり今回の我那覇の場合、仮に「正当な医療行為」だと認められなければ、事前の許可が必要だったという事になる。
事前に許可を得ていなかった後藤・我那覇はドーピング違反に問われる事になる。
「事前の許可が無ければ、点滴行為自体が禁止」というルールはJリーグ独自のものである。
WADAはその条文は定めていない。
さてCASの判定だが、全面勝訴といって差し支えないものである。
何も口に出来ず、静脈注射以外に手段が無いという我那覇の衰弱ぶり。
そして我那覇自らのの意志ではなく、医師の判断で点滴が行われた事。
以上の事情から、ニンニク抽出成分・ビタミンの点滴行為は「正当な医療行為」であるとCASは判断した。
我那覇には何ら過失はなく、制裁を科すような事例ではないとCASは確信している。
この時点で我那覇側の主張が全面的に認められた形である。
当然、点滴行為自体がドーピングかどうかをCASは判断する必要すら無い。
ところで俺が腑に落ちない点が有る。
最終手段であるCASへの提訴を行ったのは我那覇個人。
原告である我那覇には4500万円もの費用が掛かっている。
我那覇は川崎フロンターレの所属選手。
CASへの提訴は、我那覇個人ではなく、選手の管理者であるフロンターレが行うべきではなかったのか?
提訴から判決までの一部始終を、フロンターレは我那覇と弁護士に丸投げしていたとも言える。
フロンターレはCASの件について関与していない。
いや、それ以前の段階、Jリーグのドーピング判定が出た時点で、我那覇と一緒に取り組む事を放棄してしまっている。
巨額の金を一選手に出させる形をクラブは取っていた。
フロンターレにとっても信用問題になっている事なのに。
我那覇は想像を絶する苦悩を乗り越えて、本当に良く頑張った。
フロンターレのサポーターの方々からは勿論、一般の方からも善意の金が沢山集まった。
選手協会も各クラブのチームドクターも軍資金を提供した。
当事者の所属クラブは、お金を出しただけか?
チーム我那覇が色々していた中、何やってたんだよ!
後藤がフロンターレを辞めた理由が分かる様な気がする。
今回の火種になったビタミンやニンニクの有効成分について。
ビタミンは薬局では勿論、健康食品の形で様々な店で出回っている物である。
ニンニクの抽出物は、「オキソアミヂン」という成分が「発熱性消耗疾患等の栄養補給」という目的で、キューピーコーワゴールド等の滋養強壮剤に配合されている医薬品である。
どちらも内服薬で体調不良時によく使われる物だ。
医師が診断を下し、同じ薬を静脈注射の形で使っても良さそうなものだ。
体内に入る事には変わり無いんだし。
常識で考えて、そう思うのだが。
ジミ・ヘンドリックス。
ジャニス・ジョップリン。
シド・ヴィシャス。
ドラッグで命を落としたミュージシャンは多い。
そしてドラッグで記録を作り、ドラッグで体を壊したアスリートは限りなく多い。
薬物毒の悲劇を無くす為に、反ドーピングの精神が有るんじゃないか?
サッカーは人間が陽気暮らしをする為に有ると俺は信じてる。
その本筋から外れない様に願う。

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