●正直な人、不正直な人
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介護センターへ行くと、そのつど、
いろいろな人に出会う。
そこでのこと。先日は、こんな
ことがあった。
人間の心理を知るのに、たいへん
おもしろい事実なので、そのまま
ここに書きとめる。
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介護センターへ行くと、そのつど、いろいろな人に出会う。先日も出会った。こんなことがあった。仮に、その2人の人を、Aさん(女性、50歳くらい)と、B氏(60歳くらい)としておく。
Aさんと、こんな会話をした。
私「(施設にいる)お母さんのインフルエンザの予防注射は、どうしますか?」
A「私は、受けませんが……」
私「老人には、よくないのでしょうか?」
A「受けたところで、効果があるとはかぎりませんし……」
私「はあ……。で、お母さんは、どうなさいますか?」
A「母は、毎年、受けていません……」と。
一方、B氏とは、こんな会話をした。
私「よくここ(=介護センター)へおいでになるのですか?」
B「忙しいから来ません。……4か月に1回くらいかな」と。
AさんとB氏の会話の(ちがい)が、あなたには、わかるだろうか。Aさんは、私が、介護施設にいるAさんの親の予防注射はどうしますか、と聞いたのに対して、「私は、受けません」と、答えている。まず、自分のことを話している。つまり「私も受けていないから、母も受けない」と。
何か、やましいことでもあるのだろうか?
一方、B氏は、ありのままを、すなおに話している。4か月に1回というのは、回数としては、少ない。少ないが、悪びれた様子もない。ありのままを、そのまま話している。
何でもない会話だが、そんな会話の中にも、その人の正直さが、そのまま表れる。Aさんは、たいへん不正直な人とみてよい。いつも自分の心を偽り、飾っている。一方、B氏は、正直。事実を、そのまま話している。
この話を家に帰ってからワイフに話すと、ワイフは、興味深そうに、私の話を聞いてくれた。
「きっとそのAさんね、予防注射を受けさせていないことを、どこかでうしろめたく思っているのよ。それをあなたに指摘されたものだから、被害妄想のようなものが先に立って、そう言ったのだと思うわ」と。
ワイフの言ったことは、ズバリ、核心をついている。私は、何も、Aさんを責めるつもりで、そう言ったのではない。が、Aさんは、自分が責められていると誤解した。だから、返事を、オブラートで包んだ。
ついでながら言っておくが、老人のばあい、予防注射といっても、1000円前後の費用でしてもらえる。たいした金額ではない。
私「ぼくはね、少なくとも、この10年以上、正直に生きてきたよ。努めて、そうしてきた」
ワ「そうね」
私「だから、そういうふうに、心を偽る人を見ると、心底、不愉快になる。一方、正直な人を見ると、心が洗われるかのようなすがすがしさを覚える」と。
子どものころの私は、ここでいう不正直な子どもだった。だから今、よけいに、不正直な人を見ると、不愉快になるのかもしれない。子どものころの自分を、見せつけられるように思うのかもしれない。
私「あのAさんにしても、お金がもったいないから、受けませんとで言えば、正直な人ということになる。でも、そういうことは言わないだろうね」
ワ「自分をよく見せるために、ね」
私「反対に、B氏が不正直な人だったら、どうだろう?」
ワ「きっと、こう言うと思うわ。……『できるだけ、時間を見つけて来るようにしています。母もさみしがるでしょうから』と、ね。4か月に1回という話は、ぜったいにしないと思うわ」と。
……ということもあって、私は、改めて、心に誓う。自分に言って聞かせる。「私は、正直に生きるぞ」と。
ありのままの自分を、そのままさらけ出しながら生きる。そういう私を、人がどう思おうと、私の知ったことではない。