【親子の断絶が始まるとき】
●最初は小さな亀裂
最初は、それは小さな亀裂で始まる。しかしそれに気づく親は少ない。「うちの子に限って……」「まだうちの子は小さいから……」と思っているうちに、互いの間の不協和音はやがて大きくなる。そしてそれが、断絶へと進む……。
今、「父親を尊敬していない」と考えている中高校生は55%もいる。「父親のようになりたくない」と思っている中高校生は79%もいる(『青少年白書』平成10年)(※)。
が、この程度ならまだ救われる。親子といいながら会話もない。廊下ですれ違っても、目と目をそむけあう。まさに一触即発。親が何かを話しかけただけで、「ウッセー!」と、子どもはやり返す。そこで親は親で、「親に向かって、何だ!」となる。あとはいつもの大喧嘩!
……と、書くと、たいていの親はこう言う。「うちはだいじょうぶ」と。「私は子どもに感謝されているはず」と言う親もいる。しかし本当にそうか。そこでこんなテスト。
●休まるのは風呂の中
あなたの子どもが、学校から帰ってきたら、どこで体を休めているか、それを観察してみてほしい。そのときあなたの子どもが、あなたのいるところで、あなたのことを気にしないで、体を休めているようであれば、それでよし。あなたと子どもの関係は良好とみてよい。
しかし好んであなたの姿の見えないところで体を休めたり、あなたの姿を見ると、どこかへ逃げて行くようであれば、要注意。かなり反省したほうがよい。ちなみに中学生の多くが、心が休まる場所としてあげたのが、(1)風呂の中、(2)トイレの中、それに(3)ふとんの中だそうだ(学外研・98年報告)。
●断絶の三要素
親子を断絶させるものに、三つある。(1)権威主義、(2)相互不信、それに(3)リズムの乱れ。
(1) 権威主義……「私は親だ」というのが権威主義。「私は親だ」「子どもは親に従うべき」と考える親ほど、あぶない。権威主義的であればあるほど、親は子どもの心に耳を傾けない。
「子どものことは私が一番よく知っている」「私がすることにはまちがいはない」という過信のもと、自分勝手で自分に都合のよい子育てだけをする。子どもについても、自分に都合のよいところしか認めようとしない。あるいは自分の価値観を押しつける。一方、子どもは子どもで親の前では、仮面をかぶる。よい子ぶる。が、その分だけ、やがて心は離れる。
(2) 相互不信……「うちの子はすばらしい」という自信が、子どもを伸ばす。しかし親が「心配だ」「不安だ」と思っていると、それはそのまま子どもの心となる。人間の心は、鏡のようなものだ。
イギリスの格言にも、『相手は、あなたが思っているように、あなたのことを思う』というのがある。つまりあなたが子どものことを「すばらしい子」と思っていると、あなたの子どもも、あなたを「すばらしい親」と思うようになる。そういう相互作用が、親子の間を密にする。が、そうでなければ、そうでなくなる。
(3) リズムの乱れ……三つ目にリズム。あなたが子ども(幼児)と通りをあるいている姿を、思い浮かべてみてほしい。(今、子どもが大きくなっていれば、幼児のころの子どもと歩いている姿を思い浮かべてみてほしい。)そのとき、(1)あなたが、子どもの横か、うしろに立ってゆっくりと歩いていれば、よし。しかし(2)子どもの前に立って、子どもの手をぐいぐいと引きながら歩いているようであれば、要注意。今は、小さな亀裂かもしれないが、やがて断絶……ということにもなりかねない。
このタイプの親ほど、親意識が強い。「うちの子どものことは、私が一番よく知っている」と豪語する。へたに子どもが口答えでもしようものなら、「何だ、親に向かって!」と、それを叱る。そしておけいこごとでも何でも、親が勝手に決める。やめるときも、そうだ。子どもは子どもで、親の前では従順に従う。そういう子どもを見ながら、「うちの子は、できのよい子」と錯覚する。が、仮面は仮面。長くは続かない。あなたは、やがて子どもと、こんな会話をするようになる。
親「あんたは誰のおかげでピアノがひけるようになったか、それがわかっているの! お母さんが高い月謝を払って、毎週ピアノ教室へ連れていってあげたからよ!」
子「いつ誰が、そんなこと、お前に頼んだア!」と。
● リズム論
子育てはリズム。親子でそのリズムが合っていれば、それでよし。しかし親が4拍子で、子どもが3拍子では、リズムは合わない。いくら名曲でも、2つの曲を同時に演奏すれば、それは騒音でしかない。
このリズムのこわいところは、子どもが乳幼児のときに始まり、おとなになるまで続くということ。そのとちゅうで変わるということは、まず、ない。たとえば4時間おきにミルクを与えることになっていたとする。そのとき、4時間になったら、子どもがほしがる前に、哺乳ビンを子どもの口に押しつける親もいれば、反対に4時間を過ぎても、子どもが泣くまでミルクを与えない親もいる。
たとえば近所の子どもたちが英語教室へ通い始めたとする。そのとき、子どもが望む前に英語教室への入会を決めてしまう親もいれば、反対に、子どもが「行きたい」と行っても、なかなか行かせない親もいる。こうしたリズムは一度できると、それはずっと続く。子どもがおとなになってからも、だ。
ある女性(32歳)は、こう言った。「今でも、実家の親を前にすると、緊張します」と。また別の男性(40歳)も、父親と同居しているが、親子の会話はほとんど、ない。どこかでそのリズムを変えなければならないが、リズムは、その人の人生観と深くからんでいるため、変えるのは容易ではない。
●子どものうしろを歩く
権威主義は百害あって一利なし。頭ごなしの命令は、タブー。子どもを信じ、今日からでも遅くないから、子どものリズムにあわせて、子どものうしろを歩く。横でもよい。決して前を歩かない。アメリカでは親子でも、「お前はパパに何をしてほしい?」「パパはぼくに何をしてほしい?」と聞きあっている。そういう謙虚さが、子どもの心を開く。親子の断絶を防ぐ。
※ ……平成10年度の『青少年白書』によれば、中高校生を対象にした調査で、「父親を尊敬していない」の問に、「はい」と答えたのは54・9%、「母親を尊敬していない」の問に、「はい」と答えたのは、51・5%。
また「父親のようになりたくない」は、78・8%、「母親のようになりたくない」は、71・5%であった。
この調査で注意しなければならないことは、「父親を尊敬していない」と答えた55%の子どもの中には、「父親を軽蔑している」という子どもも含まれているということ。また、では残りの約45%の子どもが、「父親を尊敬している」ということにもならない。
この中には、「父親を何とも思っていない」という子どもも含まれている。白書の性質上、まさか「父親を軽蔑していますか」という質問項目をつくれなかったのだろう。それでこうした、どこか遠回しな質問項目になったものと思われる。
(参考)
●親子の断絶診断テスト
最初は小さな亀裂。それがやがて断絶となる……。油断は禁物。そこであなたの子育てを診断。子どもは無意識のうちにも、心の中の状態を、行動で示す。それを手がかりに、子どもの心の中を知るのが、このテスト。
Q1 あなたは子どものことについて…。
★子どもの仲のよい友だちの名前(氏名)を、四人以上知っている(0点)。
★三人くらいまでなら知っている(1点)。
Q2 学校から帰ってきたとき、あなたの子どもはどこで体を休めるか。
★親の姿の見えるところで、親を気にしないで体を休めているる(0)。
★あまり親を気にしないで休めているようだ(1)。
Q3 「最近、学校で、何か変わったことがある?」と聞いてみる。そのときあなたの子どもは……。
★学校で起きた事件や、その内容を詳しく話してくれる(0)。
★ 少しは話すが、めんどう臭そうな表情をしたり、うるさがる(1)。
★心のどこかに、やってくれるかなという不安がある(1)。
Q4 何か荷物運びのような仕事を、あなたの子どもに頼んでみる。そのときあなたの心は…。
★いつも気楽にやってくれるので、平気で頼むことができる(0)。
Q5 休みの旅行の計画を話してみる。「家族でどこかへ行こうか」というような話でよい。
そのときあなたの子どもは…。
★ふつうの会話の一つとして、楽しそうに話に乗ってくる(0)。
★しぶしぶ話にのってくるといった雰囲気(1)。
(評価)
15〜12点…目下、断絶状態
11〜 9点…危険な状態
8〜 6点…平均的