●保護と依存
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依存性の強い人は、独特の言い方をする。
『だから何とかしてくれ言葉』というのが、
それである。
たとえば空腹になったときでも、「〜〜を
食べたい」とは、言わない。
「おなかがすいたア〜」と言う。つまり
そう言いながら、相手に向かって、「だか
ら、何とかしてくれ」と訴える。
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日本語の特徴と説明する人もいる。しかし依存性の強い人は、独特の言い方をする。『だから何とかしてくれ言葉』というのが、それである。
たとえば空腹になったときでも、「〜〜を食べたい」とは言わない。「おなかがすいたア〜」と言う。つまり、そう言いながら、相手に向かって、「だから、何とかしてくれ」と訴える。
同じように、水がほしいときは、「のどがかわいたア〜」と。トイレに行きたいときは、「おしっこオ〜」と。
子どもの世界では、よく見られる会話だが、しかし子どもの世界だけとは、かぎらない。おとなの世界でも、そして年配者の世界でも、よく見られる。
たとえば、「私も、年を取ったからねエ〜」というのが、それ。つまり「私も年を取ったから、何とかしろ」と。
最近でも、私は、ある知人から、こんなハガキをもらった。暑中見舞いの最後に、こう書き添えてあった。「静岡まで行けばいいですか?」と。つまり「静岡まで行けば、そこまで迎えに来てもらえるか」と。
私をその知人を、招待した覚えはない。何かの会話のついでに、そんなようなことを話したのを、誤解されたらしい。それはともかくも、それを読んで、『だから何とかしてくれ言葉』を使うのは、子どもだけではないと知った。
もっとも、私の兄などは、若いころから、その『だから何とかしてくれ言葉』を、よく使った。
新しいテレビがほしくなると、電話をかけてきて、「近所の人は、みんな、衛星放送を見ている」「うちのテレビは映らない」と。
今は、半分以上頭がボケてしまったが、それでも、『だから何とかしてくれ言葉』をよく使う。
「ラジカセがこわれたア」
「冬になると、寒い」
「今のメガネは、よく見えない」と。
こうした依存性は、一度身につくと、その人の生き方そのものになってしまう。だれかに依存して生きることが、あたりまえになってしまう。が、その人自身の責任というよりは、半分以上は、まわりの人たちの責任と考えてよい。まわりの人たちが、そういう環境を作りあげてしまう。
子どもの世界でも、依存性のたいへん強い子どもがいる。しかしその子どもが問題かというと、そうではない。よく調べていくと、そういう子どもの親も、また依存性の強い人であることがわかる。自分が、依存性が強いから、子どもの依存性に、どうしても甘くなる。あるいは、それに気づかない。
反対に、このタイプの親は、親にベタベタと甘える子どもイコール、(かわいい子)イコール、(いい子)としてしまう。だから子どもの依存心だけを問題にしても、あまり意味はない。そうなる背景には、親自身の情緒的な欠陥、精神的な未熟性があるとみる。つまり、それだけ、「根」は深い。
で、ついでに、私の兄のことだが、現在は、グループホームに入居している。個室が与えられ、三食、昼寝つき。おやつもついているし、ときどき遠足にも連れていってもらえる。しかし兄にしてみれば、それが当たり前の生活になっている。
が、グループホームといっても、大学生の生活費並みの費用がかかる。具遺体的には、毎月12〜3万円プラス、諸経費、小遣い、治療代などなど。合計で、15万円ほど、かかる。
そういう兄だが、もちろん、私に対して、ただの一度も、礼など言ってきたことはない。むしろ逆に、あれこれと不平や不満ばかりを並べる。またまわりの人たちも、間接的だが、私に対して、「もっと、しっかりとめんどうをみろ」というようなことを言う。
依存する側と、依存される側。それが長くつづくと、(実際、もう30年以上もつづいているが……)、それが当たり前になってしまう。そしてそれを前提に、みなが、ものを考える。今では、兄自身の依存性を問題にする人は、だれもいない。「めんどうをみるのは、弟の責任」と、決めてかかってくる。(私だって、いつボケるか、わからないぞ!)
そんなわけで、子どもに依存心をもたせると、子ども自身も苦労をするが、そのツケは、回りまわって、最後には、親のところにやってくる。家族のところにやってくる。
だから……というわけでもないが、子どもには、依存心をもたせないほうがよい。いや、その前に、あなた自身は、どうか。それを疑ってみたほうがよい。もしあなたが依存性の強い人なら、あなたの子どもも依存性の強い子どもになる。その可能性は、きわめて高い。
では、どうするか?
その第一歩として、『だから何とかしてくれ言葉』を耳にしたら、すかさず、こう言い返してやったらよい。
「だから、それがどうしたの?」と。
一見冷たい言い方に聞こえるかもしれないが、そのほうが、子どものため、あなた自身のため、ということになる。
(付記)
子育ての目標は、子どもを自立させること。欧米流に言えば、「よき家庭人として、自立させること」。
その一語に尽きる。
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依存性について書いた原稿を
1作、添付します。
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【日本人の依存性を考えるとき】
●森S一の『おくふろさん』
森S一が歌う『おふくろさん』は、よい歌だ。あの歌を聞きながら、涙を流す人も多い。しかし……。
日本人は、ちょうど野生の鳥でも手なずけるかのようにして、子どもを育てる。これは日本人独特の子育て法と言ってもよい。あるアメリカの教育家はそれを評して、「日本の親たちは、子どもに依存心をもたせるのに、あまりにも無関心すぎる」と言った。そして結果として、日本では昔から、親にベタベタと甘える子どもを、かわいい子イコール、「よい子」とし、一方、独立心が旺盛な子どもを、「鬼っ子」として嫌う。
●保護と依存の親子関係
こうした日本人の子育て観の根底にあるのが、親子の上下意識。「親が上で、子どもが下」と。この上下意識は、もともと保護と依存の関係で成り立っている。
親が子どもに対して保護意識、つまり親意識をもてばもつほど、子どもは親に依存するようになる。こんな子ども(年中男児)がいた。
生活力がまったくないというか、言葉の意味すら通じない子どもである。服の脱ぎ着はもちろんのこと、トイレで用を足しても、お尻をふくことすらできない。パンツをさげたまま、教室に戻ってきたりする。
あるいは給食の時間になっても、スプーンを自分の袋から取り出すこともできない。できないというより、じっと待っているだけ。多分、家でそうすれば、家族の誰かが助けてくれるのだろう。そこであれこれ指示をするのだが、それがどこかチグハグになってしまう。こぼしたミルクを服でふいたり、使ったタオルをそのままゴミ箱へ捨ててしまったりするなど。
それがよいのか悪いのかという議論はさておき、アメリカ、とくにアングロサクソン系の家庭では、子どもが赤ん坊のうちから、親とは寝室を別にする。「親は親、子どもは子ども」という考え方が徹底している。こんなことがあった。
一度、あるオランダ人の家庭に招待されたときのこと。そのとき母親は本を読んでいたのだが、五歳になる娘が、その母親に何かを話しかけてきた。母親はひととおり娘の話に耳を傾けたあと、しかしこう言った。「私は今、本を読んでいるのよ。じゃましないでね」と。
●子育ての目標は「よき家庭人」
子育ての目標をどこに置くかによって育て方も違うが、「子どもをよき家庭人として自立させること」と考えるなら、依存心は、できるだけもたせないほうがよい。
そこであなたの子どもはどうだろうか。依存心の強い子どもは、特有の言い方をする。「何とかしてくれ言葉」というのが、それである。たとえばお腹がすいたときも、「食べ物がほしい」とは言わない。「お腹がすいたア〜(だから何とかしてくれ)」と言う。
ほかに「のどがかわいたア〜(だから何とかしてくれ)」と言う。もう少し依存心が強くなると、こういう言い方をする。
私「この問題をやりなおしなさい」
子「ケシで消してからするのですか」
私「そうだ」子「きれいに消すのですか」
私「そうだ」子「全部消すのですか」
私「自分で考えなさい」子「どこを消すのですか」と。
実際私が、小学4年生の男児とした会話である。こういう問答が、いつまでも続く。
さて森S一の歌に戻る。よい年齢になったおとなが、空を見あげながら、「♪おふくろさんよ……」と泣くのは、世界の中でも日本人ぐらいなものではないか。よい歌だが、その背後には、日本人独特の子育て観が見え隠れする。一度、じっくりと歌ってみてほしい。
(参考)
●夫婦別称制度
日本人の上下意識は、近年、急速に崩れ始めている。とくに夫婦の間の上下意識にそれが顕著に表れている。内閣府は、夫婦別姓問題(選択的夫婦別姓制度)について、次のような世論調査結果を発表した(2001年)。
それによると、同制度導入のための法律改正に賛成するという回答は42・1%で、反対した人(29・9%)を上回った。前回調査(96年)では反対派が多数だったが、賛成派が逆転。
さらに職場や各種証明書などで旧姓(通称)を使用する法改正について容認する人も含めれば、肯定派は計65・1%(前回55・0%)にあがったというのだ。
調査によると、旧姓使用を含め法律改正を容認する人は女性が68・1%と男性(61・8%)より多く、世代別では、30代女性の86・8%が最高。
別姓問題に直面する可能性が高い20代、30代では、男女とも容認回答が8割前後の高率。「姓が違うと家族の一体感に影響が出るか」の質問では、過半数の52・0%が「影響がない」と答え、「一体感が弱まる」(41・6%)との差は前回調査より広がった。
ただ、夫婦別姓が子供に与える影響については、「好ましくない影響がある」が66・0%で、「影響はない」の26・8%を大きく上回った。
調査は01年5月、全国の20歳以上の5000人を対象に実施され、回収率は69・4%だった。なお夫婦別姓制度導入のための法改正に賛成する人に対し、実現したばあいに結婚前の姓を名乗ることを希望するかどうか尋ねたところ、希望者は18・2%にとどまったという。