● 同時的二重人格
+++++++++++++++++
多かれ少なかれ、だれにも
二重人格性はある。
二重人格というほど、重篤(じゅうとく)な
ものではないかもしれない。
しかし、だれにも、ある。
が、本当の問題は、大半の人は、
それに気づかないでいること。
気づかないまま、本来の自分でない
自分の引き回されてしまう。
+++++++++++++++++
ふつう二重人格というときは、人格そのものが入れかわると同時に、別人格になったとき、もう一方の人格の記憶がなくなってしまうことをいう。よい例が、スティーブンソンが書いた、『ジキル博士とハイド氏』である。
ジキル博士のときのジキル博士は、ハイド氏としてしたことは、まったく覚えていない。が、ひとたび、ハイド氏になると、今度は、ジキル博士のしたことは、まったく覚えていない。
が、そうでない二重人格もある。別人格になりながら、もう一方の人格を、意識している二重人格がある。記憶も、そのまま残っている。これを「同時性二重人格」とか、「同時的二重人格」という。
たとえばあるきっかけで、夫婦げんかになったとたん、その人は別人格になるのだが、同時に、もう一方の人格が心の別のどこかにいることを知っている。あるいは感じている。そして夫婦げんかをしながらも、別の自分が、「やめろ」「疲れるだけだ」「仲なおりしろ」と命令したりする。
もちろん記憶は、そのまま残る。夫婦げんかが終わったあとも、けんかをしている最中のことをよく覚えている。
こうした二重人格性、つまり二重人格というほど重いものではないが、そういう傾向があるという意味での二重人格性というのは、多かれ少なかれ、だれにも、ある。何かの拍子に、本来の自分でない自分が、顔を出し、その自分が支配的になったりする。
原因は、幼児期に経験した、心的外傷(トラウマ)、というのが、通説になっている。
この時期に、何か耐えがたい心的経験をすると、それから逃れたいという一念が、その人の二重人格性を形成する。そしてそれがさらに極端になったのが、同時的二重人格であり、さらに極端になったのが、二重人格ということになる。
親の虐待、暴力、家庭騒乱など。ふつうでない不安感や恐怖感、さらには慢性的な心配ごと。はげしい離婚騒動が、引き金になることもある。またここでいう虐待には、性的虐待も含まれる。
この二重人格性の特徴は、ただ単に、人格が入れかわるということだけではなく、価値観、人生観まで、入れかわってしまうということ。ある男性(50歳)は、妻とけんかを始めたとたん、別人格になってしまうという。
「それまでの自分は、さみしがりやで、ひょうきん者なのですが、妻と言い争いになったとたん、南米のジャングルでも、ひとり旅ができるのではないかと思えるほど、自分が強くなったように感じます」と。
しかし本当の問題は、当の本人が、二重人格性をもちながら、それに気づかないこと。そのつど、「私は私」と、自分で自分を納得させてしまう。この点でも、自分を知ることは、本当にむずかしい。
そこであなた自身は、どうか? 簡単なチェックテストをしてみよう。
(1) カッと興奮したようなとき、別人のように、暴れたり、暴言を吐いたりする。
(2) 別人のようになったとき、ときに破滅的なものの考えかをし、自暴自棄になる。
(3) 別人のようになったとき、それまでの価値観とはちがった価値観をもつ。
(4) 別人のようになったとき、好きだったはずの人まで、嫌いになったりする。
(5) 別人になったとたん、それまで心のどこかでがまんしてきた不平、不満が顔を出す。
(6) 別人になったとたん、グチぽくなり、過去にこだわりやすくなったりする。
(7) しばらくすると、またもとの自分にもどるが、まるで他人事のように忘れてしまう。
(8) もとの自分のもどっても、気分の悪さだけが、心のどこかに残ることが多い。
こうした症状がみられたら、あなた自身の二重人格性を疑ってみたらよい。たいていの人は、こう言う。「そのときは、どっちの自分が、本当の自分なのか、わからなくなります」と。
つまり本来の自分(生活時間の大半を占める自分)と、別人格(何かの拍子に、短期間だけそうなる自分)とでは、ものの感じ方、考え方、感情の表れ方まで、変わってしまう。そしてそれぞれが、たがいに、もう一方の人格を否定する。
そこで重要なことは、まず、自分が、そういう自分であることに気づくこと。まずいのは、気づかないまま、同じ失敗を繰りかえすこと。
そういう自分であることに気づけば、これは心の病気一般に通ずることだが、あとは、時間が解決してくれる。1年とか2年では、無理かもしれないが、10年とか20年をかけて、時間が解決してくれる。
なおつぎのようなことにも注意しなければならない。
たとえば夫側か妻側か、どちらか一方に、二重人格性があったとする。当然、このタイプの夫婦のばあい、夫婦げんかも、並はずれて激しいものになりやすい。で、こうした夫婦げんかを繰りかえしていると、長い時間をかけて、もう一方の妻側か夫側のほうも、二重人格性をもちはじめることがあるということ。
こうした(伝染性)は、心の病気では、よく観察される。よく知られた例に、うつ病がある。家族のうちのひとりがうつ病になったりすると、いつの間にか、家族全員が、同じうつ病になったりすることがある。もちろん、親子の間でも、伝染することがある。ほかに、最近、私が聞いた例では、こんなのもある。
ある会社のある課で、課長がうつ病になったという。で、しばらくすると、その課のほぼ全員の社員まで、うつ病になってしまったという。
二重人格性についても、そういう例は多い。そんなわけで、この問題は、あなた個人の問題ですますというわけにはいかない。繰りかえすが、そのためにも、まず、自分を知る。すべてはここから始まる。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 二重人格 同時的二重人格 同時性二重人格 多重人格 心的外傷 トラウマ)