【においについて】
●性フェロモン
私は、「男」ということもあって、女性の生理のにおいが、よくわかる。通りすぎただけで、よくわかる。ふつうのにおいではない。強烈なにおいである。
で、そのたびに、ワイフに、「お前は、におわないか?」と聞くと、「私にはわからない」と。
男と女とでは、嗅覚の構造そのものがちがうようである。
で、よく、性フェロモンが、話題になる。動物の世界では、常識である。わかりやすく言うと、動物は、その時期になると、特有のにおいを発し、異性をちかづけようとする。相手は、そのにおいをかいだだけで、性的に興奮したりする。そういうにおいを、性フェロモンという。
人間にも、性フェロモンらしきものがあることがわかっている。私は、「ある」と確信しているが……。が、問題は、そういうにおいを感ずる器官が、あるかどうかということ。
それについても、私は、「ある」と確信している。
若いころ、ガールフレンドの発する、甘いにおいに、うっとりしたことがある。香水とか、そういうものによるのではない。体中から、甘いにおいが漂っていた。
で、最近の研究によれば、それまでは「ない」とされてきた、それらしき器官があることがわかってきた。鼻の奥、鼻中隔(びちゅうかく)の両側に、それがあるという。発見者の名前をとって、ヤコブソン器官と呼ばれている。(日本では、「じょ鼻器官」と呼ばれている。)
このヤコブソン器官は、ここでいう性フェロモンの受信器官と考える学者も多い。ただ近年までは、この器官は、すでに退化してしまっていて、役にたたないという説が一般的であった。
が、しかし、だ。このヤコブソン器官が、成人の私たちにも残っていて、どうやら機能しているらしいということまで、わかってきた。
私は、その一つの例として、女性の生理のにおいをあげた。ワイフは、「わからない」と言うが、私にとっては、強烈なにおいである。こうしたちがいがなぜ起こるかといえば、性にまつわる器官がちがうからではないのか。
私のヤコブソン器官は、男として、「女」を、強烈にかぎわけることができる。しかし女である、ワイフには、それがない(?)。そう考えると、納得できる。
そう言えば、「汗臭い、男のにおいが好き」と、私に言った女性がいた。反対に、「汚れた女性の下着のにおいが好き」と、私に言った男性もいた。(ともに、ヘンタイか?)
においというのは、いろいろな意味で、「性」とからんでいるようだ。はたして、あなたは、どうだろうか?
(はやし浩司 性フェロモン)
この「におい」の話で、つぎのような原稿を書いたのを、思いだした。子どもの世界では、「臭い子ども」は嫌われる。いじめの対象になることも、あるようだ。
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●親は子で目立つ
よきにつけ、悪しきにつけ、親は子で目立つ。つまり目立つ子どもの親は、目立つ。たとえば園や学校で、よい意味で目立つ子どもの親は、あれこれ世話役や委員の仕事を任せられる。
そんなわけでもしあなたが、よく何かの世話役や委員の仕事を園や学校から頼まれるとしたら、それはあなたの子どもがよい意味で目立つからと考えてよい。
子どもというのは、家へ帰ってから、園や学校での友だちの話をする。ほかの親たちはそういう話をもとにして、あなたのことを知る。もちろん悪い意味で目立つ子どももいる。
しかしそういうばあいは、世話役や委員などの仕事は回ってこない。一つの基準として、あなたの子どもが、友だち(とくに異性)の誕生会などのパーティによく招かれるようであれば、あなたの子どもは園や学校で人気者と考えてよい。
実際に子どもを招くのは親。その親は日ごろの評判をもとにして、どの子どもを招待するかを決める。同性のときは、ギリやつきあいで呼ぶことも多いが、異性となると、かなり人気者でないと呼ばない。
一方、嫌われる子どもというのはいる。もう二五年ほど前(一九八五年ころ)の古い調査で恐縮だが、私が調べたところ、嫌われる子どもというのは、つぎのようなタイプの子どもということがわかった(小学生三〜五年生、二〇人に聞き取り調査)。
(1) いじめっ子、(2)乱暴な子、(3)不潔な子、(4)無口な子。
私が「静かな子(無口な子)は、だれにも迷惑をかけるわけでないから、いいではないのか?」と聞くと、「不気味だからいやだ」という答がはねかえってきた。親たちの間で嫌われる子どもは、何か問題のある子どもということになる。また人気のある子どもは、明るく活発で、運動や学習面で目立つ子どもをいう。やさしい子どもや、おもしろい子どもも、それに含まれる。
先日もある母親がこう相談してきた。「いつも世話役を命じられて困っています」と。で、私はこう言った。「それはあなたの子どもがいい子だからですよ」と。
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この原稿を書くきっかけとなったのは、ある母親から、いじめの相談を受けたからである。その母親は、深刻な表情で、こう言った。「うちの子(小4)は、学校でいじめにあっています。どうしたらいいでしょうか?」と。
そのとき、その母親に対する、私の第一印象は、とにかく、その母親が、臭かったこと。
体臭というより、病臭に近かった。しかも、髪の毛が、強烈な悪臭を放っていた。
なぜ、その子どもは、学校でいじめにあっているのか。で、私なりに調べてみたのだが、その理由はすぐわかった。たまたま同じ学校に通っている子どもが、何人かいた。
私「どうして、あのX君は、みんなに嫌われるの?」
子どもたち「だって、あの子、臭いもん」と。
で、その数日後、私は、再び、その母親に会った。やはりひどい悪臭を放っていた。理由はわからないが、私は入浴のし方そのものに、問題があるのではと思った。しかし私は、その母親に、そのことを話すことができなかった。
……と、この事件のことは、このあたりで、記憶から消えている。ただそのあと、ワイフが、私にこう言ったのは、覚えている。
「やはり、正直に、話すべきだったわ」と。つまり、その子どもが、臭いから、みなからいじめの対象になっているということ。それにその母親自身も臭いということ。それを正直に、私が話すべきだった、と。
しかし、実際には、言えない。あるいは、あなたなら、それを言うことができるだろうか。
同じようなケースだが、その少し前、こんなことがあった。中学2年生のI君という子どものことである。その彼も、臭かった。そばを通り過ぎただけで、悪臭がプンとにおった。
そのときは、私は、I君に注意した。「I君、汗をかいたら、風呂で、よく体を洗うんだよ。夏場は、においが体に残るから」と。
が、その言葉で、I君は、激怒。今でいう、キレた状態になった。突然、金切り声で、「ちゃんと、洗ってる!」と叫んだ。ふだんは、どちらかというと、静かで、おとなしい子どもだった。
で、あとで聞いて知ったのだが、そのI君もやはり、「臭い」ということで、みなから、仲間はずれにされていたそうだ。だからI君は、私の言葉に、過剰なまでに反応した。……らしい。そういう失敗もある。だから、よけいにその母親には、正直には話せなかった。
においにかぎらず、身体的な特徴などが、いじめの理由や原因になることは多い。しかしそれを口にするのは、教育の場では、タブー中のタブー。当然である。……ということで、においの話は、ここまで。
ただここで言えることは、においには、人間の道徳や理性を狂わすパワーがあるということ。私は、それを書きたかった。そしてこの文章を読んだあなたは、あなた自身や、あなたの子どものにおいについて、少しだけ、反省してみてほしいということ。
あなたはともかくも、あなたの子どもが、それが理由で、みなに、いじめられたり、仲間はずれにされているようなら、入浴のし方を、もう一度、指導しなおしてみたらよい。
【付記】
実際には、子どもは、においには、きわめて敏感である。他人の体臭に敏感というだけではない。自分の体臭を指摘されることについても、敏感である。子どもによっては、ときに異常ともいえるほど、過激に、反応する。
そんなわけで、親子でも、子どものにおいについて指摘するときは、慎重に! かなり良好な関係にある人でも、親が、子どもに、「におい」のことで注意したりすると、とたんに、雰囲気が険悪になったりする。私の息子の一人も、歯周病か何かで、口臭がひどくなったことがあった。
そのとき私は、軽い気持ちで、「おい、臭いから、一度、歯医者で、歯垢(しこう)を取ってもらってきたら?」と言っただけなのだが、その一言が、息子を激怒させてしまった。で、そのあと、あれこれ本人の怒りをしずめ、納得させるのに、1時間ほど、時間がかかった。
口臭も含めて、自分が放つにおいというのは、自分ではわからないもの。においには、そういう特性がある。
(はやし浩司 におい 体臭 性フェロモン)
(041101)